今回の同時多発テロ事件をめぐって、マスコミの中では、アメリカ政府による何らかの報復攻撃が当然であるかのように語られている。そして、その時に日本がどのように協力するのかさえ公然と論じられている。とんでもない話である。いったいどのような国内法および国際法に基づいて、そのような「報復」攻撃が正当化されるというのか? ブッシュ大統領は、記者会見の中で、実行犯もその実行犯をかくまうものも同罪であると公言している。いったい、どのような法理に基づくなら、そのようなたわごとが許されるのか? 殺人犯をかくまった市民は、殺人犯と同罪か? アメリカの刑法にはそのような恐るべき規定があるというのか?
アメリカは、沖縄での強姦事件の際、日本の取り調べや司法制度では容疑者の人権は十分に守られないと述べて、執拗に容疑者引渡しに抵抗した。一部の人権派は、このアメリカの姿勢を当然と歓迎した。だが、容疑者の「人権」に敏感なはずのアメリカ政府およびアメリカ軍は、今回の事件の場合、容疑者どころか、その容疑者をかくまったものまでも同罪だと叫んで、報復を誓っている。
1993年の世界貿易センター爆破事件の際、当時のクリントン大統領はスーダンなどの国に巡航ミサイルを多数打ち込んだ。いったい、どのような動かぬ物証があったというのか? もちろんそんなものはない。推定無罪の原則はどこに行ったのか? もちろん、そんなものは泥靴でふみじられ、いかなる物証もなしに、勝手に怪しいとにらんだ他国の建物に巡航ミサイルが打ち込まれたのである。取調べの際の弁護士はどうなった? もちろん、そんなものの出る幕はなかった。取り調べどころか、裁判もなしに有罪判決が下され、ミサイルが他国に打ち込まれ、多数の死傷者が出た。これらの被害者はいったいいかなる罪を犯したのか? テロリストをかくまった(と推定された)国に住んでいたという罪である。
これまでアメリカは何を行なってきたか? テレビに映る、崩れ落ちる巨大なビル、燃え盛る炎、叫び声をあげながら逃げ惑う市民の姿……、これらはすべて、われわれにとってなじみのある風景である。ただ違うのは、これまでのこうした悲劇的光景はすべて、アメリカの国以外のところで見られたということである。ベトナムで、ラオスで、カンボジアで、イランで、イラクで、ユーゴスラビアで…。誰がそのような光景を作り出したのか? アメリカ政府である。もちろん、アメリカ政府は、民間の旅客機をハイジャックする必要はなかった。なぜなら、彼らの手もとには無数の最新鋭の戦闘機、ハイテクのミサイル発射装置があったからである。アメリカ帝国主義のテロリズムによる死者の数は、今回の死者の数の数十倍にのぼる。湾岸戦争だけで、10万人近いイラク人民が殺されたと言われている。これらの国はアメリカに報復をしたか? していない。第2次世界大戦の際に世界中で投下されたすべての火薬量を2倍以上上回る爆弾があの小さな国に落とされたベトナムは、アメリカ本土にいかなる報復をしたか? テロリスト国家アメリカをかくまい、陰に陽に協力した同盟諸国(日本や韓国)に対し、ベトナムはどのような報復をしたか? いっさい何もしていない。
アメリカ政府には、どの国に対しても「報復」攻撃をする資格はない。そのような暴挙には断固として反対しなければならない。もちろん、日本政府はいかなる形でも協力してはならない。それは憲法違反であるだけでなく、小規模なテロリストに反対して、大規模なテロリストに味方する行為である。地域暴力団に反対して、広域暴力団の報復に味方するようなものである。われわれは、アメリカ政府によるいかなる「報復」攻撃にも反対する。(S・T編集部員)