コラム

「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか?

2016年09月29日(木)17時00分
「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか?

Jonathan Ernst-REUTERS

<大統領選でトランプは、同盟国との関係見直しを公言しているため、仮にトランプが当選すれば日米安保体制は大きな転換を迫られる可能性がある。また例えヒラリーが当選しても、日米関係は現状維持では済まされない>

 米大統領選では、ドナルド・トランプ候補が「日米安保を見直す」とか「TPPに強硬に反対」という姿勢を取っています。仮に同候補が当選して大統領になると、日米関係が大きく転換を迫られるという議論があります。

 極端な場合、在日米軍が大幅に削減されて、否が応でも日本が「自主防衛」を迫られる可能性はゼロではないと思います。問題はカネだけではありません。例えば、

「日本を守ってやっている米兵がヘリや航空機の事故で負傷すると、同情や感謝ではなく、危険だという非難が飛んでくる、そんな国など守ってやるものか」

 などという発言も飛び出しそうです。

【参考記事】討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向

 こうした「同盟国内の複雑な対米感情」というのは、イタリアでも韓国でもドイツでも、そしてもっと複雑で危険な構図としてはトルコやサウジアラビアでも一般的なものです。ですが、トランプ的な発想としては、そもそも「同盟国への持ち出し」が許せないとしています。

 ですから、「一方的にカネと人を出してリスクを引き受けているのに、それに感謝しない国は守るべきでない」というようなことを言い出しても不思議ではありません。トランプとその支持層である「オルタナ右翼」の「アメリカ・ファースト」という一派には、そのような考え方があります。

 そうなると、100%ではないにしても「自主防衛」への転換を迫られることになります。そして、仮にトランプへのリアクションだとしても、「対米従属」的な発想から「自立」ができるのなら、それは良いことだという議論があります。

 ですが、「何も考えない」ままで「自立」すれば、それは「孤立」を招くだけという危険性もあります。これは極めて重要な問題です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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