Kindle Unlimited対象になっていたので、読んでみました。本書は、古代ローマ帝国における奴隷事情を、マルクス・シドニウス・ファルクスという架空の人物が奴隷の扱い方の教科書を書いているという体裁で、とても詳しく紹介しています。
- 作者: ジェリー・トナーマルクス・シドニウス・ファルクス
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2016/04/08
- メディア: Kindle版
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実際の著者は、ケンブリッジ大学で古代ローマの社会文化史を研究する、ジェリー・トナーという方です。
私は、最初この本を、勘違いで、日本人の特に研究者でもない人が書いた本だと思って読んでいたので、それにしては、ずいぶんと細かく資料にあたっていて凄いなと思っていたのですが、本職の研究者の人が書かれていたのですね。
さて、内容はというと、とても面白かったです。知らなかったことが盛り沢山でした。
私は、奴隷というと、強制労働をさせられている人というような単純なイメージを持っていたのですが、ローマでは、もちろん、農場や鉱山でそのような働き方をさせられていた奴隷もいましたが、都市部では、もっとまともな、言ってみれば普通の仕事、例えば、主人の子供の世話や教育係、料理係などの家庭内の仕事、学者のような専門的な仕事などを割り当てられていた奴隷もいました。
主人が認めれば、財産を蓄えたり、結婚(事実婚)したり、子供を作ったりすることも可能でした。本書では、奴隷がいかに価値のある財産であるか(奴隷商人から購入する場合、今のお金で言うと数百万円〜だそうです)が強調されていて、子供を産ませて奴隷を増やすことは主人にとっては喜ばしいことだったそうです。
また、主人の代わりに農場を管理する役割の奴隷もいました。そのような奴隷は、奴隷でありながら、奴隷を使用していたりしました。
一年に一回、奴隷の不満を解消させるための、無礼講の祭りというものもあったそうです。
ある一定期間を真面目に働いた奴隷などは、主人の意志や遺言により、解放されて解放奴隷となり、自由になれる可能性もあったそうです。逆に言うとそれをニンジンにして、上手く奴隷を働かせていた訳ですね。解放奴隷になった後も、元主人との関係は続き、主人と同じ墓に入ることが出来る可能性もあったそうです。
本書を通じて特に印象に残ったのは、これら奴隷の扱いについて、かなり法律が作られていたということです。時代は、紀元前から紀元後にかけてのことですよ? そのころ既に、そのような複雑な社会システムを持つまでにローマが発展していたことですから、奴隷制の善し悪しは別として、とても感銘を受けました。
なお、本書は、他の人のレビューを見てから読んだせいでしょうか、どうも、「ローマ時代の奴隷はこうでしたけど、主人を現代の経営者、奴隷をサラリーマン、貧乏なローマ市民はさしずめ弱小自営業者と読み替えてみると、昔も今もたいして変わらないですね」ということを言いたいんだろうなあ、あるいは、人を使う立場の人にリーダー論として読んでほしいんだろうなあと、著者の意図が透けて見えるようで、多少興ざめするところはありました。
しかし、実際のところ、社会があれば、裕福な上位層と貧乏な下位層、それらの間の支配関係が出来るわけで、それぞれが、各時代で何と呼ばれているのかの名前の違いでしか無いのかもしれません。
いずれにしても、とても面白い本でした。そして、もっとローマについて知りたくなりました。
ローマに関する本というと、塩野 七生の『ローマ人の物語』くらいは知っているのですが、まだ読んだことはありません。
ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/06/01
- メディア: 文庫
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この本、文庫本でなんと43巻!もあるそうです。全部揃えたら、2万円を超えるんですかね…しかもまだKindle化されていません。Kindle化されて、まとめ買いできるようになったら買ってみようかな。
まとめ
『奴隷のしつけ方』をKindle Unlimitedで読んでみたのでその感想を書いてみました。ローマ時代の奴隷事情がとても詳しく、かつ、平易にかかれていて、とても面白かったです。ただ、現代と対比させて読んでしまうと、少し暗くなってしまうかもしれません。