韓国サムスン・エレクトロニクス(以下、サムスン)のSSDは、パフォーマンスと信頼性の高さで人気を集めており、世界シェアもNo.1だ。そのサムスンの最新SSDが、昨年(2014年)12月12日に発表された「Samsung SSD 850 EVO」(以下、850 EVO)である。
850 EVOは、2013年7月25日に発表された「Samsung SSD 840 EVO」(以下、840 EVO)の後継であり、3D V-NANDと呼ばれる3次元構造のNANDフラッシュを採用したメインストリーム向け製品だ。従来の840 EVOに比べて、ランダムライト性能などが向上しているほか、耐久性と信頼性も一層高くなり、製品の保証期間が3年から5年へと拡大されている。850 EVOのパフォーマンスは以前の記事で詳しく検証しているが、その結果は期待通りのものであった。今回はその補足として、長期にわたって使い続けたときの性能を検証していきたい。
SSDを使い続けると性能が低下する理由
一般にSSDは長期間使い続けると、性能が低下する傾向がある。まずはその理由について、簡単にまとめておこう。
SSDの記録媒体であるNANDフラッシュメモリは、一度も使われていない未使用領域にはデータを直接書き込むことができるが、すでに記録されているデータを書き換える際には、直接上書きすることができない。既存のデータをいったん消去してから、新しいデータを書き込む必要がある。
NANDフラッシュメモリの読み書きは、ページと呼ばれる単位(8KBや16KBが一般的)で行われるのだが、消去はページを複数個(通常は128個や256個)まとめたブロック単位だ。ページとブロックのサイズが異なるため、データの書き換え時は複雑な処理が発生しており、ざっと流れを追うと以下のようになる。
・書き換え対象となるデータが存在するページを、そのページを含むブロック単位でバッファ領域(十分な空き領域を持つブロック、またはバッファメモリ)へコピー |
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・コピー先のデータを更新 |
・コピー元のブロックを消去 |
・新しくしたデータ(ページ)を含むブロックを、ブロックごと書き戻す |
・管理テーブルの情報を更新 |
・消去可能なデータを含むページを登録(Trim機能に使われる) |
未使用ページが多い場合は、こうした書き換えも高速に処理できる。しかし、SSDを使い込んで書き込みや書き換えが増えると、未使用ページが減っていく。そこで消去可能なページを集めてブロックを構成し、消去し、未使用ページを作らなければならない。よって、書き換えに時間がかかるようになるのだ。
実際のSSDは、速度低下をできる限り抑える仕組みを備えている。SSDへのアクセスがないときにデータを移動するなどして、消去可能なブロックを構成して消去を行い、未使用ページに戻すという、ガベージコレクションと呼ばれる機能だ。加えて、Windows 7以降のWindows OSは、Trimと呼ばれる機能を標準でサポートしており、SSDへの無駄な書き込みを抑え、効率的に未使用ページを管理できるようになっている(Trim対応のSSDが必要だが、最近のSSDはほぼ確実にTrimをサポートしている)。
とはいえ、SSDを使い続けると、性能が低下していくことは避けられない。データの書き換えを頻繁に行ったSSDは、ダーティドライブなどと呼ばれる。カタログやWebで公開されている性能は、あくまで新品のSSDを使ったテスト結果であり、ダーティドライブでの性能ではない。
SSDによって性能低下のペースは異なるが、サムスンのSSDは使い込んでも性能が落ちにくいことが魅力のひとつだ。そこで今回は、連続的にランダム書き込みを行った際の性能低下を検証してみることにした。