3Dプリントの人工骨、周囲の骨再生を促進 米研究
2016年09月29日 10:08 発信地:マイアミ/米国
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【9月29日 AFP】安価で簡単に作れる新たな「人工骨」に、周囲の骨組織の形成を促す作用があることが、ネズミの脊椎やサルの頭蓋骨への移植で確認された。研究論文が28日、発表された。
米ノースウエスタン大学(Northwestern University)の研究チームによると、「Hyper-Elastic Bone(HB、超弾性骨)」と呼ばれるこの生体材料を使用した、人への臨床試験は、今後5年以内に開始される可能性があるという。
論文の主執筆者で、ノースウエスタン大の研究者のアダム・ジェイカス(Adam Jakus)氏は、報道陣との電話会議形式の取材に「この材料が素晴らしい機構的性質を持つことは知っていた。3D印刷で非常に簡単で迅速に(人工骨を)作製できることも、今回の研究で分かった」と述べ、「われわれが直接観察した結果における、この材料の生物学的効果は、極めて驚くべきものだった」と続けた。
米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)に掲載された論文によると、この人工骨は「歯や骨に含まれる無機物を含有するセラミックと、合成樹脂のポリマーを主原料としている。これらはどちらも、臨床で使用されているものだ」という。
論文によると、これまでの骨移植片は、より高価で、壊れやすく、患者の体内で拒絶反応が生じる危険性があったが、この人工骨はそれとは異なり、さまざまな形状に印刷して、必要に応じて切断したり折り曲げたりして接合させることができるという。
「実験動物に移植すると、HBは周囲の組織とすぐに一体化した。ネズミでは、脊椎固定を促進するための骨を再生した」と論文は述べている。
アカゲザルを用いた実験では、頭蓋骨の穴をふさぐために、より大きなサイズの骨片を印刷。移植を受けたサルは4週間後に治癒し、感染症や他の副作用の兆候も全くみられなかった。研究では、周囲の骨組織の形成についての証拠が確認できた。
この生体材料によって、脊椎、歯、骨肉腫などの手術や形成再建外科手術などを含む、さまざまな骨損傷に対応可能なオーダーメードの移植医療の可能性に研究チームは期待を膨らませる。
論文の執筆者で、ノースウエスタン大のラミーユ・シャー(Ramille Shah)助教は、「生体材料のHBは、さまざまな状況に対応可能で、しかも安価だ。特に発展途上国で多くみられる整形外科や顎顔面に関する先天性異常のある小児患者らが、これを容易に利用できるようになることをわれわれは希望する」とコメントした。(c)AFP