Spotifyはなぜ日本上陸を4年待ったか

「なぜ~」式の安直な記事タイトルをつけてしまった。

Spotifyがついに日本に上陸を果たした。まだ正式にサービスが始まっていないので、上陸を正式に予告した、と言うべきか。東京にオフィスを持ち、公式サイトやLinkedInで人材を募集し、ウェブサイトやインタフェースの日本語化を進め、サービス開始の準備をしてきたことはウォッチャーならご存知の通り。望んでのことかは分からないが、ローンチするする観測記事も何度も出てきたので、ようやくという感じだろう。

報道によれば日本での準備に4年をかけたということだが、なんでそんなに時間がかかったのだろうか。特に昨2015年には、AWA、LINE Music、Apple Music、Google Play Musicと定額制の音楽配信サービスが次々とローンチしており、Spotifyは長い準備を進めているうちに日本では出遅れてしまったことになる。

今更ではあるが、Spotifyと他のサービスの差別化要因は、無料会員が用意されていることだ。広告が挟みこまれ、高音質も選べず、肝のモバイルでは望んだ曲を選べないものの、無料で合法的に膨大な商業音楽カタログにアクセスできるというのは、今もって他にはない強みである。そう考えると、Spotifyは日本の音楽レーベルが無料の配信サービスを認めるまで、じっと4年待ったのだと言える。

気になるのは、具体的にどのレーベルが参加するのか、未だはっきりしないことだ。無料会員の是非を巡って、米国ではTaylor Swiftなどの著名アーティストがSpotifyからカタログを引き上げるということが起きている。日本でも競合の有料限定サービスよりも品揃えが悪くなる可能性は十分にあるだろう。また、このごろ独占配信によるカタログ充実を進めているApple Musicが、日本でもこれを好機にと独占配信を増やしていくのかもしれない。

もちろんSpotifyには、日本は有料会員だけからサービスを始めるというオプションもあった。そうすれば少なくとも昨年からはサービスを始められただろう。世界の音楽市場を見ると、日本は米国に次ぐ二番目の規模だそうで(日本レコード協会, 2015年)、Spotifyにとっても重要な市場に違いない。

しかし我慢したのか、あるいは本国の成功モデルから外れることを恐れたのか、結果的にはグローバルのサービスをほぼそのまま日本に持ち込むことにした。そして競合からは一年遅れたものの、先行した有料音楽配信サービスも日本で幅広い人気を獲得するには至っていない。

日本でどれだけの人気を集めるかは分からないが(世界的にもGoogleやAppleという巨大企業との戦いがどのような結末を迎えるのか分からないが)、少なくとも「日本だけ独自路線を走って失敗」という最悪の結果はすでに避けられたと考えると、4年のあいだ日本人をやきもきさせた甲斐は十分にあったのではないかしら。

(それにしても、ある意味でSpotifyの一番競合になってしまう、あやしい無料の音楽配信アプリが、今もAppleやGoogleのアプリストアに蔓延しているのは、なんとも恐ろしい話。そうしたアプリがいつまでも消えないことが、Spotify容認に繋がったのかもしれないけれど)

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