流出顧客情報を悪用し偽造カード 中国人ら逮捕
警視庁組織犯罪対策特別捜査隊が男女6人を
偽造されたクレジットカードを使って商品をだまし取ったとして、警視庁組織犯罪対策特別捜査隊は29日、住所不定、無職、劉国鵬容疑者(26)ら中国籍の男女6人を詐欺容疑などで逮捕したと発表した。被害総額は2300万円を超えるとみられ、うち約1700万円は昨年11月に不正アクセスの被害が明らかになった米ホテル大手のヒルトン・ワールドワイドから流出した顧客情報が悪用されていた。
同隊によると、6人は偽造されたクレジットカードを使い、転売目的で商品を購入する「買い子」と呼ばれるグループ。逮捕容疑は今年1月16日、東京都豊島区などのドラッグストア2店で偽造クレジットカードを使用し、化粧水など60点(計約53万円)をだまし取ったなどとしている。同隊は認否を明らかにしていない。
カード会社から情報提供を受けて捜査した結果、グループが今年1月以降、少なくとも都内の約80店舗で家電やブランド品など約2300万円を不正に購入していた疑いがあることが判明。被害の約7割が世界で4500を超えるホテルを運営するヒルトンの顧客情報によるものだった。
ヒルトンは昨年11月、ホテルの販売時点情報管理(POS)システムが不正アクセスを受け、宿泊客が決済で使用したクレジットカードの番号や有効期限などが流出したと発表。流出件数は公表されていないが、今回の事件で少なくとも日本人や米国人の顧客約50人の情報が悪用された可能性があるという。
グループの関係先からは「生カード」といわれるプラスチック原板が約420枚見つかっており、同隊はグループが不正に入手したカード情報を転写して偽造カードを製造していたとみて、カード情報の入手先などを調べている。【斎川瞳】
不正入手の情報、犯罪組織に転売
不正アクセスなどによって盗み出された情報が悪用されるケースは後を絶たない。今年5月には、南アフリカの銀行から流出した同行発行のクレジットカード情報が書き込まれた偽造カードを使って、日本のコンビニエンスストアの現金自動受払機(ATM)から総額18億円超が引き出される事件も起きた。
捜査関係者によると、サイバー犯罪グループが不正アクセスなどによって入手した個人情報は高額で別の犯罪組織に転売されたり、インターネットの闇サイトなどで販売されたりしている。闇サイトでは1件1万円程度で売られているケースもあるという。
捜査幹部は「情報を盗む組織、情報を使って買い物をする組織などに分業化されている可能性が高く、全体像を解明するのが困難なことが多い」と話している。【斎川瞳】