4階で48人死亡 7月以降、病院「増加」
横浜市神奈川区の大口病院で点滴に異物を混入された入院患者2人が中毒死した事件で、事件が起きた同病院4階では今年7月以降に入院患者計48人が死亡していたことが病院関係者への取材でわかった。病院は患者の死亡が増えていることを認識していたものの、事件とは受け止めていなかったという。神奈川県警もこうした経緯を把握しているが、大半の遺体はすでに火葬されており、それぞれの死因の検証は困難とみられる。【村上尊一、藤沢美由紀】
病院関係者によると、同病院の4階で7月1日から9月20日までの82日間に死亡した入院患者は男女計48人。8月下旬には5人が死亡した日があった。9月初旬にも4人が死亡した日があった。こうした状況について、病院内では「患者の死亡が増えている」と認識されていた。ただ、死亡例に不審な点は見つからず、いずれも病死などと診断され、警察に届け出ることはなかった。
同病院の病床数は85床(一般42床、療養43床)。4階は主に重症の高齢者を受け入れ、終末期の入院患者も多い。入院中の患者が亡くなることはふだんからあるため、異常な事態との判断には至らなかったという。
9月20日に中毒死した八巻信雄さん(88)と、同18日に中毒死した西川惣蔵さん(88)は4階の同じ部屋に入院していた。いずれも点滴に界面活性剤が混入されたことによる中毒死とみられ、県警は連続殺人事件として捜査している。
八巻さんの死亡後、点滴袋の中が泡立っていたため看護師が異変に気付き、通報を受けた県警が遺体を司法解剖した結果、界面活性剤が検出された。18〜20日に死亡し、火葬されずに残っていた3人の患者の遺体も司法解剖した結果、このうち西川さんの体内から界面活性剤の成分が検出された。
事件を受け、同病院は10月1日まで外来診療を休むとしていたが、改めて当分の間、休診すると告知した。
4階患者の血液検査
神奈川県警は28日、八巻信雄さん、西川惣蔵さんと同じ大口病院の4階に入院している患者の血液検査を始めた。投与された点滴に界面活性剤などが混入されていなかったかを確認することが目的で、対象は10人前後とみられる。
捜査関係者によると、八巻さんの死亡後、4階ナースステーションに保管されていた未使用の点滴袋約50個のうち、10個前後のゴム栓の保護フィルムに、細い針で刺した穴が確認された。点滴袋には投与する患者の名前が記載されているが、穴が見つかった袋の中には八巻さんと西川さん以外の複数の患者の分もあった。
こうしたことから県警は、注射器などを使って無差別に異物が混入された可能性があるとみており、点滴袋の中身を調べるとともに、他の患者の血液検査も必要と判断した。