現代アートの祭典、あいちトリエンナーレが、名古屋など愛知県の三都市で開かれている。三回目を迎え、その最大の魅力としている“街なかミュージアム”が広範に根づくか。正念場にもなる。
テーマは「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」。
今回の芸術監督を務める港千尋さん(多摩美術大教授)が打ち出した。「サライ」は旅の疲れを癒やす「家」を意味するという。
世界を旅し、写真家で著述家、大学では映像人類学を教える港さんらしい着想だ。
トリエンナーレはイタリア語で三年ごとの意味。三年に一度の芸術展覧会をいい、二年に一度なら「ビエンナーレ」。最も古い国際芸術祭は、一八九五年に始まったベネチア・ビエンナーレだ。国同士が数々の芸術部門で競う芸術の「五輪」としても知られる。
「あいち」の始まりは二〇一〇年。三回目の今回は、名古屋(主会場)・岡崎両市に新たに豊橋を加え、三都市に会場を広げた。
現代美術、舞台芸術などに過去最多の三十八の国・地域から百十九組のアーティストが参加。その内訳は海外組が上回る。
分かりにくいともされる現代アートに親しむだけでなく、テーマが暗示する通り、異文化発見、交流の場となる期待も大きい。
中でも、リオ五輪・パラリンピックの舞台だったブラジルとの関わりに注目したい。
愛知県で暮らすブラジル人は約四万八千人。全国の都道府県で最も多い。そのつながりを意識し、祭典の総合学芸員的な役割(キュレーター)の一人にブラジル人女性を初めて抜てき。前回はゼロだったブラジル人作家も四人が出品し、地球の反対側から発せられた熱気との共鳴を試みたのだ。
都市型では横浜トリエンナーレ(〇一年から)が先輩格だが、今秋から、さいたまトリエンナーレ(テーマ「未来の発見!」、十二月十一日まで)、茨城県北芸術祭(「海か、山か、芸術か?」、十一月二十日まで)なども開かれ、芸術祭は地域振興型も含めてそれぞれの真価が問われる。
国内最大級の規模と目される、「あいち」の最大の個性は、街中を、丸ごと美術館や博物館に見立てた市民参加型の取り組みだ。
それを一過性に終わらせぬためには十月二十三日までの会期中、市民側の盛り上がりも試される。「創造」のキャラヴァン(隊商)の乗組員は、街なかでアートを楽しむ人々でもあるのだから。
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