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【社説】

蓮舫氏代表質問 選ばれる党への一歩に

 蓮舫代表の下、民進党は「選択される政党」に生まれ変わることはできるのか。きのう参院でも始まった本格論戦。日本の民主主義のためにも、再生への第一歩を力強く踏み出さなければならない。

 安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問がきのう参院でも始まり、代表として初めて登壇した蓮舫氏は「選挙後の初めての本会議のとき、与党議員の多さに正直、愕然(がくぜん)とした」と率直に切り出した。その言葉は参院選後の政治状況を如実に表す。

 前身である旧民主党の一時期、百を超えていた参院での議席も、今やほぼ半分にまで落ち込んだ。

 一方、旧民主党から政権を奪還した自民党は安倍総裁の下で党勢を拡大し、同党が悲願とする憲法改正に前向きな「改憲派」は今や衆参両院で三分の二を超える。

 「安倍一強」と指摘される情勢は有権者の選択の結果ではある。政権時代、有権者の期待を集めながらも、力量不足から裏切った旧民主党の責任も小さくはない。

 しかし、党勢拡大とともに、安倍政権の傲慢(ごうまん)さも目立ち始めた。

 二十六日には所信表明演説中の首相に促され、自民党議員が立ち上がって拍手した。それが自衛隊員や海上保安官らをたたえるものでも、独裁国家のような異様な光景には与党内からも批判が出た。

 答弁にも乱暴さが散見される。

 蓮舫氏が株式運用比率を倍増させた年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が十兆円の運用損を出したと指摘すると、首相は「短期的な評価損をことさら取り上げて年金制度への不安をあおることは慎むべきだ」と反論した。

 批判することさえ認めようとしないのでは論戦は成り立たない。こうした政権のおごりを正すのは野党の役目である。たじろぐことなく堂々と切り込めばいい。

 同時に、民進党には政権交代可能な二大政党の一翼を担う役割も課せられている。政権の選択肢を有権者に示すことは責務だ。

 特に、首相主導の経済政策「アベノミクス」は、経済格差を拡大し、個人消費の低迷や実質賃金の低下に有効な処方箋とはなり得ていない。

 政権が軌道修正しないのなら、民進党の出番だ。問題解決に寄与する、実現可能で、財源の裏付けのある具体的な政策体系を練り上げ、有権者に示すべきである。

 一度失った信頼を取り戻すのは容易ではないが、野党に安住し、政権奪還の気概を示せなければ、民進党に存在価値はない。

 

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