国会論戦を刷新 「提案」戦略、不発
安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が28日、参院本会議でも始まり、民進党の蓮舫代表が就任後初めて国会論戦に立った。蓮舫氏は「提案」の言葉を多用し、「批判」が目立った党のイメージ刷新を試みた。10月の衆院東京10区、福岡6区両補選や、年明けとの観測も流れる衆院解散・総選挙に向け、党勢回復への足がかりを得たいためだ。しかし、雇用回復や賃金上昇の数字を列挙する首相の恒例の答弁との論戦はかみ合わなかった。
「今の時代に合った経済政策が必要だと強く提案する」。蓮舫氏はアベノミクスの転換を求めた。8月閣議決定の事業規模28.1兆円の経済対策などの財政出動を「旧来型」とし、その繰り返しでは人口減少社会の経済成長は見込めないとの主張だ。「教育、雇用、老後の不安を取り除いて初めて個人消費が動き出す」とし、再分配強化が経済成長につながるとした。
「人への投資」は民進党が参院選で掲げた政策。しかし、共産党などと足並みをそろえて「安倍政権での憲法改正反対」などを前面にした結果、十分浸透しなかった。蓮舫氏はこの反省に立ち、党の独自政策提案を重視。代表質問では憲法改正に一切触れなかった。
首相は経済対策について「民需主導の持続的な経済成長につながる政策が中心で、指摘は当たらない」と反論。参院選の勝利は「アベノミクスを一層加速せよと国民から力強い信任をいただくことができた」と蓮舫氏の追及を一蹴した。
蓮舫氏は保育士給与を5万円引き上げる法案を民進党などが国会に提出しているのに対し「政府・与党が全く向き合ってくれなかった」とただした。しかし、首相は「恒久財源の確保策が明らかになっていない」と問題点を指摘。蓮舫氏の「提案路線」についても「重要なのは言葉を重ねることではない。100の言葉より1の結果だ」と皮肉る余裕も見せた。
事業仕分けで注目を浴びた蓮舫氏は、首相の所信表明演説に「行政改革の文字が1文字もない」とかみついたが、首相に「行革の重要性は論をまたない。今後ともしっかりと取り組む」とかわされた。
蓮舫氏は本会議後、記者団に「27日の野田佳彦幹事長は24回、私は22回提案したが、首相は自画自賛で終わった」と語った。自民党の高村正彦副総裁は記者団に、民主党政権が公約を実現できなかったと指摘し「実現可能なことに重きを置いた提案をしていただきたい」とけん制した。【朝日弘行】