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 全く新しいがん治療薬「オプジーボ」は、日本の大学の基礎研究から生まれ、日本の製薬会社が世界に先駆けて製品化し、注目を集めている。これからも生命科学の研究から新たな芽が生まれ、人々の役に立っていくためには、何が必要か。今回の経験から学ぶべきことを、ノーベル賞候補とも目される生みの親に聞いた。

□狙ってできないブレークスルー

 ――世界をあっと言わせた「オプジーボ」に関し、拾った石ころのような物質が、ダイヤモンドの原石だったと表現していますね。

 「大学院生のちょっと面白い提案から始まった研究で偶然見つかった物質でした。どんな働きをしているのか調べたら4年後、意外にも、異物を攻撃して体を守る『免疫』にブレーキをかける役割だとわかりました。このブレーキをはずせば、免疫ががんを攻撃するのではないかと応用を考え始めました。想定外の展開でした」

 ――初めからがんの治療をねらっていたのではないのですね。

 「その通りです。私の専門はがんではありません。むしろ素人だったことがよかったんです。免疫の力でがんを治す試みは、数多く行われてきたものの、いずれもうまくいかず、ほとんどタブーのようになっていましたが、素人はそんな『常識』にとらわれずにすみます。特許を共同出願した小野薬品工業は、1年がかりで国内の製薬会社に共同開発の打診をしたけれど断られ、逆に、こんなのに手を出したら会社がつぶれると忠告されたそうです」

 「僕は先入観なしにデータを見て、これだけネズミで効いたらヒトに効かないはずはないと確信がありました。米国のベンチャーを訪ねて話したら、『やる』と1時間で即決でした。その後、別のベンチャーと小野薬品が開発することになり、あとはとんとん拍子。米国の臨床試験で、手の施しようがない末期がん患者の2~3割に効いたという驚くような結果が出て、世界的に注目されました」

 ――確信通りだったのですね。

 「今回は幸運にもうまくいきましたが、重要なのは、どんなに確信があったとしても、生命科学はやってみないことにはわからない、ということです。物理や工学などと大きく違うところです。生命現象にはあまりにも未知の要素が多くてよくわからない。いわばブラックボックス。とにかくやってみるしかないんです。無駄が出ることを覚悟してね。政府の科学技術政策の司令塔である総合科学技術会議の議員だったとき、基礎研究の研究費はばらまきだと批判され、むしろ、ばらまかないとだめなんだと言いました。火星にロケットを飛ばすといった実現への計画を立てられるプロジェクトとは全く違うんです」

 ――目標すらわからないと。

 「はい。ブレークスルー(飛躍…

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