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[FT]欧州、電気自動車増で大気汚染の恐れ

2016/9/28 6:30
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 電気自動車(EV)のブームによって、欧州は、英国で計画されているヒンクリー・ポイント原子力発電所と同規模の発電所を50カ所近く建設することを検討せざるを得ない――。欧州連合(EU)の専門家らがこう警告した。

 政府の資金で運営されている欧州環境庁(EEA)の研究は、大量のEVが最も環境汚染の激しい化石燃料である石炭を燃やす発電所からの電力で充電されるとしたら、二酸化硫黄(SO2)による大気汚染の全体的なレベルが上昇する可能性が高いことを示している。

電気自動車が普及すれば、そのための電力が大幅に必要とされる(写真は米ロサンゼルスの高速道路)。米国では渋滞中に発生する余分なエネルギーを電力に転換する技術を模索している=AP
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電気自動車が普及すれば、そのための電力が大幅に必要とされる(写真は米ロサンゼルスの高速道路)。米国では渋滞中に発生する余分なエネルギーを電力に転換する技術を模索している=AP

 バッテリーで動く自動車は一般に、環境を汚し、悪臭を放つガソリン車やディーゼル車と比べると純然たる環境面の恵みと見なされており、新たな調査研究は電気式の交通輸送への大きなシフトが多くの恩恵をもたらすことを裏付けている。

 平均すると、人間が生み出す主な温室ガスで、地球温暖化の原因となっている二酸化炭素(CO2)のほか、窒素酸化物(NOx)や微粒子といった種類の大気汚染物質の排気量が顕著に減少するという。

 だが、大半の電力が石炭火力発電所からくるポーランドのような国では、EVへシフトする恩恵が「疑わしい」ものになる可能性があると、EEAで研究のプロジェクトマネジャーを務めたマグダレーナ・ヨズウィツカ氏は言う。同氏は本紙(フィナンシャル・タイムズ)に「地元には明らかな恩恵と機会があるが、多少のリスクもある」と語った。

 欧州では、気候変動を抑制しようとする各国政府からの多額の補助金に後押しされ、過去6年間で電気乗用車の販売が急増した。だが、EVはまだ、昨年欧州の道路を走行した乗用車全体の0.15%しか占めていない。

 EEAの研究によれば、EVのシェアが2050年までに80%に達すれば、充電のために150ギガワット(GW)の追加電力が必要になるという。英国に建設されるヒンクリー・ポイント原発の発電能力は3.2GWで、英国最大級に数えられる発電所となる。

 EVのためにこれほどの新たな電力が必要になることは、特に再生可能エネルギーが潤沢な場所では「電力インフラに重圧をかけるかもしれない」。EEAの研究はこう警告している。「再生可能エネルギーの供給量が激しく変動する国々では、EVから生じるエネルギー需要を調整することが大きな課題になる可能性がある」

■環境に配慮した発電方法が必要

 EUのデータによると、クリーンな再生可能エネルギーの発電所が生み出す電力量は1990年以降EU全土で大幅に増加しており、風力、太陽光、水力発電は2014年にEU域内の電力の25%を占めていた。原発は27%を占めたが、なお48%近い電力が石炭、天然ガス、石油を使う発電所から来ていた。

 EEAの研究は、EVの充電に石炭火力発電だけが使われた場合、EVのライフサイクルを通したCO2排出量がガソリン車やディーゼル車より多くなることを示す、以前の研究を基礎として発展させたものだ。大気汚染の専門家らは、EEAの最新の調査結果は、EVが増える中で、各国が環境に優しい発電方法を検討する必要性を浮き彫りにしたと話している。

 世界保健機関(WHO)のアネッテ・プルスウストゥン氏は「本当に大きなインパクトを与えるには、よりクリーンなエネルギー源から電力を得なければならない。さもないと、公害の発生源を自動車から発電所に変えるだけだ」と語った。

By Pilita Clark in London

(2016年9月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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