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【神奈川】

高校教科書 市立橘の希望退ける 日本史A 東京書籍を採択

教科書の採択が行われた川崎市教育委員会の定例会=高津区で

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 川崎市教育委員会は二十一日、定例会を開き、二〇一七年度に市立高校などで使う教科書を採択した。この中で、橘高校(全日制)で使う日本史A(近現代史)の教科書については、高校側が最も希望した実教出版を退けて東京書籍を採択した。橘高校など二校は一四年にも、実教出版の教科書を使うことを希望したが、市教委はこれを通さなかった。 (山本哲正)

 川崎市教委の採択の手順は、各校がまず、使いたい教科書について、第一希望が分かる形で候補を複数あげる。それを市教委が審議し、各校ごとに使う教科書を決定(採択)している。

 実教出版の日本史Aの教科書は、一三年の発行版で国旗国歌に関する注意書きに「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述。東京都教委が同年、この教科書の使用を不適切としたことで注目された。一七年発行版では、強制をめぐる記述はなくなり、都教委は不適切の対象から外している。

 しかし、この日の定例会で委員らは、「社会的事象が多面的多角的に考察されて、公正な判断力を養えるか」という観点から市教委が一昨年、実教出版の教科書を退けたことを持ち出し、改訂後も「課題とした部分が変わっていない」などとした。一方で東京書籍の教科書は本文中に記載された外国名の数が比較的多く「わが国の文化などの世界的広がりを多面的多角的に考えられる」と評価した。東京書籍の教科書は橘高校としては第一希望ではないが複数候補の中に挙げていた。

 今回の採択に際し、実教出版のこの日本史Aの教科書を第一希望としたのは橘高校(全日制)だけだった。

 元教員らでつくる「教科書を考える川崎市民の会」の北谷瑞恵さんは定例会の傍聴後、「現場の教員は生徒と共に授業づくりをし、最適な教科書を選んでいる。一緒に傍聴した現役教員も『こうした決め方では現場のやる気が下がる』と言っていた」と話し、学校の希望が通らない採択のあり方に疑問を呈していた。 

 

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