「大画面スマホにペン」で快適操作なGalaxy Note7|山根康宏のワールドモバイルレポート

Samsungの最新スマートフォン「Galaxy Note7」が発売された。
スマートフォン本体に専用のスタイラスペンを内蔵した5.7インチディスプレイ搭載の製品で、このNote7はシリーズ7機種目の製品となる。最近のスマートフォンは画面サイズが年々大型化し、5.5インチクラスのものも各社から次々に製品が登場している。しかしペンを内蔵したスマートフォンを継続して製品化しているのはSamsungのみだ。

その理由は各社とも、ユーザーニーズが少ないという判断なのだろう。だがSamsungはたとえニッチだろうがペンユーザーは確実にいると判断して、5年以上も前からペン付きスマートフォンの開発を続けてたのだ。しかもGalaxy Note7のペンは、同社のこれまでのNoteシリーズにはない付加機能を搭載。大画面スマートフォンにはペンが必須と思わせるような、使い勝手を高めるアクセサリとなっている。

ペン内蔵スマートフォン「Galaxy Note」をSamsungは5年前から開発している(写真は初代Galaxy Note)

ペン内蔵スマートフォン「Galaxy Note」をSamsungは5年前から開発している(写真は初代Galaxy Note)

iPhone以降のタッチパネルを搭載したスマートフォンやタブレットは、指先で快適に操作できるユーザーインターフェースを搭載しておりスタイラスペンを使う必要性はほとんど無い。一昔前のタッチパネル付き携帯電話や、タッチ対応ディスプレイを搭載したノートPCはスタイラスペンを使っても操作できるようになっていたが、ペンの反応は今ひとつだった。

今や細かい操作を行いたいときは、スマートフォンの画面を指先で拡大して文字の選択なども出来る。iPhone用の専用スタイラスペンがこれまで何度も販売されてきたが、メジャー製品になり切れていないのは指先のほうが操作が快適だからだろう。

しかしMicrosoftが販売する2in1タイプのタブレット「Surfaceシリーズ」は一貫してペンを付属させており、手書き文字や細かい操作を好むユーザーに好評だ。Appleからも昨年にiPad Proが登場し、専用のペンが用意されるなどペンの需要はここに来て高まっている。
これはディスプレイのサイズと解像度が上がったことにより、画面上により小さい文字などの情報が表示可能になったことから、従来は紙の上でなくてはできなかった作業もタブレットの画面上で出来るようになってきたからだろう。またペンの精度もここ数年で各段に上がっている。

例えばiPad Proは編集者が使うなら受け取ったPDFファイに細かい修正を入れるのも簡単だ。あるいはiPad Proの大きな画面をそのままスケッチ用紙のように使えるのも精度の高いペンがあってこそだろう。従来のタブレットでは各社から販売されているペンを使っても書き味は本物のペンには及ばなかったが、iPad Proのペンは本物の鉛筆のような心地よい書き心地だ。

このようにタブレットでのペンの必要性は、文字を書き込むなど実際のペンの代わりとして使われる用途が多い。
一方、Samsungの歴代のGalaxy Noteシリーズも付属のペンは文字を書いたりイラストを描くなど、これまではペンとしての用途が主な使い道だった。しかし年々それ以外の機能も付加され、画面のスクリーンショットを撮ったり、画像の一部を選択する際にペンが使えるようになった。

ペンは書くだけではなく、スマートフォン本体の操作も出来る

ペンは書くだけではなく、スマートフォン本体の操作も出来る

とはいえこれらの作業はペンを使わずともある程度のことはできる。Galaxy Noteシリーズはペンをフィーチャーした販売プロモーションを行ってきたが、「ただの大画面スマホ」として購入し使っているユーザーも多いのが実情だ。

しかしGalaxy Note7ではスタイラスペンを単なるペンの変わりとして使うだけではなく、マウスポインタのように利用し、スマートフォンの操作をより快適にしてくれる機能が追加された。
つまりGalaxy Note7のペンは、「第三の指先」とも言える、指では操作しにくい作業を簡単に行うことができるのである。

Galaxy Note7のペン先の太さは0.7ミリで、従来のNoteシリーズのペンの半分以下の太さとなった。ここまで細いと先のちょっと丸まった鉛筆よりも尖っており、ディスプレイ上によりセンシティブに圧力を加えることも可能だ。実際にGalaxy Note7のペンによるタッチ感度は従来モデルの倍となっており、指先のちょっとした力の入れ加減も判断してくれる。

だがペン先が細くなったことで得られるメリットは、ペンの書き心地だけではない。ディスプレイ上のより細かい範囲を指定できることから、これまでのペンでは実現できなかった機能が加えられている。その一つがペンを使った翻訳機能だ。

ペンを文字の上に置くだけですいすい単語を翻訳してくれる。細いペン先ならではの機能だ

ペンを文字の上に置くだけですいすい単語を翻訳してくれる。細いペン先ならではの機能だ

この機能は画面に表示される外国語がわからないとき、その文字の上にペン先を近づけるだけで単語の意味をポップアップで表示してくれる。単語選択の精度は高く、行間の狭い文字が並んでいても知りたい単語を的確に選ぶことができる。またカメラで撮影した写真に写っている文字も同様に認識し、意味を表示してくれるのだ。

この機能はペンと画面の間が電磁誘導で反応し合い、ペン先をディスプレイにタッチしなくとも反応することから実現できる機能であり、指先では実現できない。しかも指先は太いから、ターゲットとなる文字を選ぶのも難しいだろう。単語を指先で囲めば類似の機能は実現できるかもしれないが、長い文章を読みながら何度もその作業を繰り返すのは面倒だろう。

そしてもう一つ加わった便利な機能が拡大鏡だ。これは画面上の細かい文字や写真などにペン先を近づけると、その部分を中心に画面を拡大表示してくれる機能だ。拡大率は1.5/2.0/2.5/3.0倍と切り替えられるので、ちょっとだけ大きくしたい時や、細かいディテールを表示したい時など、目的に応じて倍率を切り替えることも出来る。ペン先を細かく動かせば拡大場所も一緒に動くので、視力の弱い人にも使い勝手は高い。それに最近のWEBページは指先のピンチアウト操作で拡大できないものも増えている。

ちなみに同様の機能はiPhoneやHuaweiの製品が「フォースタッチ」で実現している。これは画面を強めに長く押すことで指先の回りを拡大表示してくれるものである。しかし肝心の見たい部分が指先で隠れるため指先をずらす必要があるし、全てのアプリには対応しない。たとえばアプリのアイコンの上で指先を強く押せば、アイコンが拡大されるのではなくサブメニューが出てきてしまう。つまり、アプリごとにフォースタッチがどんな機能を持っているかを覚えなくてはならないのだ。

数社が採用するフォースタッチ。アプリごとに機能が異なるため使い勝手は今ひとつ

数社が採用するフォースタッチ。アプリごとに機能が異なるため使い勝手は今ひとつ

Galaxy Note7はこのほかにもペンを利用する様々な機能が追加されている。
ディスプレイサイズが5.7インチと大きいため、ペンがあれば画面をいっぱいに有効利用できるし、その上細かい作業もしやすいのだ。大画面スマートフォンとペンの組み合わせは、スマートフォンの使い方の可能性をさらに引き上げてくれるものになるだろう。ただ、今までのGalaxy Noteシリーズはペン先の太さや感度が大画面を活かすには性能が追いついていなかった。そのため第三の指先にはなりえなかったのだ。

スタイラスペンの活用は、今後も様々な用途展開が考えられる。
たとえばパスワードの入力ウィンドウにペン先を近づけると、自動的にパスワードを入力してくれたり、撮影した写真がボケていた時に、ペンをかざすだけでピントを再調整する、などといった機能も実現できるだろう。直接タッチせずともディスプレイ側がペンを認識し、細かい部分を指定できるというGalaxy Note7のペンは、これからの大画面スマートフォンに無くてはならないものになるだろう。
今後さらなるスマートフォンの大画面化が進めば、他社もNote対抗モデルを出す時代がやってくるかもしれない。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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