09月27日 16時15分
ヘイトスピーチと呼ばれる民族差別をあおる街宣活動で、名誉を傷つけられたとして、在日朝鮮人のフリーライターの女性が、在特会・「在日特権を許さない市民の会」などを訴えた裁判で、大阪地方裁判所は、「限度を超えた侮辱で、差別を助長する意図が明らかだ」として、在特会側に77万円の賠償を命じました。
東大阪市に住む在日朝鮮人のフリーライター、李信恵さん(45)は、3年前からおととしにかけて、在特会の当時の会長に街頭でのヘイトスピーチで「反日記者」と呼ばれたり、インターネット上で容姿を侮辱されたりして、差別的な発言を繰り返され名誉を傷つけられたとして、在特会と元会長に、慰謝料など550万円の支払いを求めていました。
一方、在特会側は、「互いに批判しあう表現者同士の言論のやりとりで、賠償すべき発言ではない」と主張していました。
27日の判決で、大阪地方裁判所の増森珠美裁判長は、「人通りの多い繁華街などで、原告の容姿や人格を執ようにおとしめた。論評の域を逸脱した限度を超えた侮辱で、在日朝鮮人に対する差別を助長する意図が明らかだ」と指摘し、在特会側に77万円の賠償を命じました。
原告の弁護士によりますと、ヘイトスピーチについて、個人が訴えた裁判で差別が認められたのは、初めてだということです。
判決のあと、原告の李さんは、民族衣装のチマ・チョゴリ姿で記者会見し、「どんな判決が出るのか眠れなくて不安でしたが、民族差別だと認められたのはうれしく、すごく価値のある勝利だと思います。これからも小さな勝利を積み重ねて差別のない社会を作りたい」と喜びを語りました。
在特会・「在日特権を許さない市民の会」と元会長の代理人の弁護士は、「原告による批判などを受けての発言で、言論のやりとりというべきだが判決はこれを見過ごしている。在日特権を批判・追及している政治団体への偏見に基づく一方的な判決で不当であり、控訴を検討する」というコメントを出しました。
人権問題に詳しい、近畿大学の西村秀樹客員教授は、「日本社会で差別は許されないということが判決という形で積み重なっていくのは非常に大きい。これからは、ヘイトスピーチで差別的な表現をすると賠償請求され、お金を払うことになるという意味で、抑制効果があると思う」と話しています。
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