【フランクフルト=加藤貴行】独化学大手のランクセスは26日、米同業ケムチュラを買収することで合意したと発表した。買収額は約24億ユーロ(約2700億円)で、北米事業の拡大と添加剤などの強化を狙う。2004年に独バイエルの特殊化学品部門を分離し誕生したランクセスにとって過去最大の買収。世界規模の化学業界の再編が進むなか、ドイツ勢の積極姿勢が目立ってきた。
ランクセスはケムチュラの前週末終値に18.9%上乗せした1株33.5ドルで、全株を取得することで合意した。17年半ばの買収完了を見込む。
ケムチュラの15年の売上高は15億ユーロで、北米が45%を占める。ランクセスは北米売上高を上積みし、潤滑油向けの添加剤事業を拡充するほか、ウレタンや有機金属の新分野にも参入する。20年までに年間1億ユーロの相乗効果を見込む。
ランクセスはタイヤなどの原料となる合成ゴムの世界最大手。14年に就任したマティアス・ツァハト社長のもとで事業再編を進め、合成ゴムは今年、サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコとの合弁に切り替えた。今回の買収で収益源を多様化する。
化学業界ではドイツ勢が買収攻勢をかけている。農薬世界2位のバイエルが今月14日、遺伝子組み換え種子最大手の米モンサントを660億ドル(約6兆6000億円)で買収することで合意した。
5月には独特殊化学大手のエボニックインダストリーズが米産業ガス大手エア・プロダクツの機能性素材事業を38億ドルで買収することで合意。化学業界首位の独BASFも6月、金属表面処理大手の独ケメタルを32億ドルで買収することを決めている。ドイツをはじめ欧州の化学大手は事業の選択と集中で先行してきたが、強みを伸ばす買収に動いている。