「ネオ・ヒッピー」と呼ばれる起業家の活躍が話題です。半世紀前のヒッピーたちが求めた平和平等主義をビジネスに組み込み、食や環境・都市問題などの解決をめざします。1960年代後半に起こったヒッピー運動から半世紀、世界中のオーガニック革命を主導しているのはヒッピー資本主義と呼ぶ動向かもしれません。
ベルリンにある現代版「ヒッピー・ヴィレッジ」
ベルリンの中心部を東西に横切るシュプレー川沿いに、「ホルツマルクト(Holzmarkt=木材市場の意)」と呼ぶボトムアップ・プロジェクトが立ち上り、注目を集めています。ここはかつてBar25(※1)という伝説的なクラブがあった場所で、木造のレストラン&カフェや野菜農園に人々が集い、一見ヒッピー村のような雰囲気が漂っています。
1万8000平方メートルの敷地には今後さまざまな施設が計画され、「自然、経済、文化を考え、生活と仕事の創造のためのオープンなエコシステムを作成する」ことがこの事業の理念です。大企業とのコンペを勝ち抜き、ベルリン市から75年リースで土地を取得したこのプロジェクトのリーダー、ユヴァル・ディーツァイガー(Juval Dieziger)氏は、何日も続くパーティを仕掛けたBar25の元オーナーで、まさにネオ・ヒッピーと呼ぶにふさわしい起業家です。彼は豪華ホテルや高層ビルの計画を持つ巨大資本とどう対抗したのでしょうか?
2000年代初頭のベルリンでは、シュプレー川沿岸5地区で「メディアシュプレー」という一大事業がスタートしました。事業面積は約180haにも及び、事業主は土地所有者であるベルリン市・地区議会・商工会議所などの代表者で構成され、2001年からメディア関連産業を中心とする大型オフィス・商業施設の誘致が本格的に開始されました。
1990年代後半、ベルリン市は壁の時代に滞っていた都市開発の遅れを取り戻そうと躍起でした。しかし、ベルリンが世界に示す最大の先進性は、ニューヨーク、東京、上海のような高層ビル群の建設ではありませんでした。魅力ある水辺の土地は、グローバル企業の誘致と土地の売却益を優先することよりも、市民の生活と直結している必要がありました。
(※1)Bar25の情景は以下のビデオを参照のこと。
https://www.youtube.com/watch?v=Fe__VrAz5d0
クリエイティブ経済×遊休施設
地元シュプレー川近辺には、旧東ドイツの火力発電所跡地を利用した世界最高峰のクラブと評価される「ベルグハイン」をはじめ、世界の若者を引きつける大小さまざまなクラブがあり、200以上のデジタル音楽系企業が集積しています。ベルリンのクリエイティブ経済の活況(※2)を支えているのは、創造的人材の集積なのです。壁の時代の文化財的な遊休施設を再利用することは、貴重な文化資産の活用でもあり、新たな建造物を創るよりもクラブ文化やスタートアップ企業、アーティストにとっては魅力的な空間なのです。
(※2)ベルリンのクリエイティブ音楽産業に関しては、以下の報告書を参照。
https://www.berlin-partner.de/fileadmin/user_upload/01_chefredaktion/02_pdf/publikationen/Musikwirtschaft_en.pdf