自民、公明両党が衆参ともに圧倒的多数を握る巨大与党のもとで、臨時国会が始まった。

 安倍首相はきのうの所信表明演説で「私たちに求められていることは、悲観することでも、評論することでも、ましてや批判に明け暮れることでもありません」と語り、こう続けた。

 「建設的な議論を行い、先送りすることなく、結果を出す」

 与野党が建設的な議論をへて結論を出す。それが望ましい国会の姿なのはその通りだ。だが過去4年近くの安倍政権での国会をみる限り、首相の言葉は空々しく響く。

 野党の批判に耳を傾けようとせず、一定の審議時間が積み上がったからと、与党の数の力で結論を押し切る――。特定秘密保護法や安全保障関連法の審議で安倍政権が繰り返してきたやり方は「建設的な議論」とはほど遠い。

 忘れてならないのは、民主主義における野党の役割の一つは、権力を握る与党に異議申し立てをすることであるという点だ。その異議の背後には、与党が選挙ですくいきれなかった少数派の声がある。

 野党の批判や異論に理があれば、与党はそれを取り込み、政策をより良くしていく。時間はかかっても、そうした丁寧なプロセスを踏むことこそ「建設的な議論」の名にふさわしい。

 首相は所信表明演説で、憲法改正案を国民に示すのは「国会議員の責任」と意欲を示した。

 衆参で改憲勢力が3分の2の議席を占めてはいても、実際に改憲手続きに動き出すなら、少なくとも野党第1党の民進党と足並みをそろえる必要がある、との見方は与党内にもある。であれば、首相が重視すべきは民進党とも話し合える議論の基盤づくりではないか。

 少子高齢化が進み、未曽有の財政危機のなかで、将来世代が安心できる社会をどう築いていくか。国民に新たな負担を求めることも避けては通れない。

 そんななか、民進党の新幹事長に野田佳彦前首相がついた。

 民主党政権だった2012年の「社会保障と税の一体改革」で、消費税率10%への引き上げを決めた自民、公明、民主の3党合意をまとめた当事者だ。

 安倍首相による2度の増税延期について、民進党(民主党)も是としたが、いま一度、持続可能な税財政の構築に向けて、与野党が共通の基盤に立って知恵を出し合う時ではないか。

 この臨時国会を、それに向けた「建設的な議論」の第一歩にすべきだ。議論をリードする最大の責任は、与党にある。