ただ、この住民組織が開始されて10年が経過し、メンバーの高齢者が相次いで亡くなっているという。
「この先、地域を支えていけるのか」――。市の担当者には、住民たちの悲鳴が聞こえだしてきている。サービスの担い手がいなくなれば、集落の維持は困難になる。だが、行政側はその対処も住民に委ねたい意向を持っている。
「何もしなければ、極端な話になれば、消滅してしまうこともありえるわけでして、それはやりようだと思います。『消滅してしまいましょう』ということも選択肢としてありえる。どのように考えるかは、住んでいる方ご自身で考えていくこと」と市の担当者は話す。
鍋山地区は専門家のアドバイスを仰ぐことに決めたが、その内容とは「集落維持のため人口に見合った規模に生活圏を縮小する」ことだった。住民組織の担い手が少ない以上、それが現実的な判断だという。
この助言を受けて、住民があらためて地区の状況をつぶさに確認したところ、住宅や田畑が荒れ地に囲まれるように点在していた。これ以上、土地の荒廃が進めば、道の整備や高齢者の見守りが難しくなる。鍋山地区の住民は、地域の縮小を議論していく方針だという。
○サービスを享受するだけではいられない将来
人口や行政サービスが現在進行形で縮小している現実。番組放映後は、その正視しがたい事態に不安や絶望に似た感情を抱く人たちが多かった。以下は一例だ。
「夕張市の現状や地方自治体の住民組織のあり方を見ると、恐ろしくて仕方ない」
「『縮小』や『消滅』が当たり前に語られる日本では、若者が将来に対して悲観的になるのも無理はない」
「NHKスペシャルが精神を削ってくる」
「NHKスペシャルで心が折れそうになる」
「未来はもっと明るいと思っていたが、とても切なくなる」
雲南市のような住民組織は現在、各地で1,600以上あるそうだが、国は今後4年間で3,000に増やそうと計画している。…