資材価格引き下げが焦点 韓国製輸入を検討
農機に不具合、難しい舵取り
2016年09月24日 11時10分
■県内農協、取り組み加速。韓国製輸入
TPP(環太平洋連携協定)の発効を念頭に、政府与党が「強い農業への転換」を見据える中、肥料や農薬など生産資材の価格引き下げが焦点になっている。「農協が扱う肥料農薬は韓国製の2、3倍高い」と指摘され、農協側は韓国製肥料の輸入を検討するなど価格引き下げの取り組みを加速させている。これまでの流れとともに、佐賀県内の動きを追った。
日本農業法人協会は今年8月上旬、韓国の生産資材の販売価格を調査し、肥料で「日本の半分程度」、農薬で「3分の1程度」とする結果を報告した。
価格差の要因として、(1)日本と比較して流通構造がシンプル(2)銘柄を絞った少品種大量生産で生産性が高い(3)農協が受け取るマージンが低い-ことなどを挙げた。
資材価格引き下げ策の第1弾として商社機能を持つ全農は8月中旬、韓国製肥料を輸入して港から直送することで、従来より3~4割程度安く提供する方針を発表。ただ、品質面での問題に懸念が広がっている。
◇農機に不具合
佐賀県内では、JAさがみどり地区が5年前に韓国製肥料を輸入。ただ、固まりやすく、農機に不具合が生じるなど問題も多く普及しなかった。今回、全農の動きに合わせて農家に韓国製肥料の注文をとったが、受け付けはゼロ。現状では支持を得ていない。
「大口で購入していただいているので、全体では店頭価格の10~13%安くなります」-。JAさがは、集落営農組織や大規模農家などを巡回し、国産の肥料農薬価格の引き下げ策を周知している。事前予約分を割引し、大口購入者・団体に最大5%を現金で戻しており、肥料をトラックに満載して指定場所に一括して届ける「満車直行」に対する割引もある。
説明を受けた橋下営農組合(武雄市)の小池一哉組合長は「農協職員の営農指導を受け、収量をしっかり取るほうが得という考え方もある。十分納得できる価格」と話す。
こうした支持の一方、「同じ銘柄でも成分の差で値段がまちまちで、店頭価格の決定過程がわかりにくい」との指摘も。県中部の大規模農家は「肥料や農薬を安く提供して農家を支えるのが協同組合本来のあり方のはず。努力を怠ってきたのでは」と手厳しい。
◇難しい舵取り
これらの批判も念頭に、全農は肥料農薬の銘柄を絞り込む検討に入っている。ただJAの営農指導の現場では「いいものを作ろうと思えばそれに適した肥料農薬もある。作業効率など、価格だけでは割り切ることは難しい」と懸念する声も上がっている。
JAグループは政府与党の改革要求と生産現場の要望の間で、難しい舵取りが迫られている。
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