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内陸部のダムも決壊していた 福島・須賀川、7人が犠牲

2011年5月3日19時1分

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写真:東日本大震災で「藤沼湖」の堤防が決壊し、被害を受けた滝地区。田畑(手前)や家屋があった面影はない=27日、福島県須賀川市、竹谷俊之撮影拡大東日本大震災で「藤沼湖」の堤防が決壊し、被害を受けた滝地区。田畑(手前)や家屋があった面影はない=27日、福島県須賀川市、竹谷俊之撮影

写真:震災前の藤沼湖=福島県須賀川市提供拡大震災前の藤沼湖=福島県須賀川市提供

図:藤沼湖の地図拡大藤沼湖の地図

 津波の被害が東北の沿岸部を襲ったとき、遠く離れた福島県の内陸部でも、濁流に多くの人がのまれていた。須賀川市西部にあるダム湖の決壊。7人が命を落とし、いまも1人が行方不明のままだ。

 須賀川市長沼地区にある「藤沼湖」は1949年、農業用のため池として造られた。高さ18メートル、幅133メートルのダムが水をせき止める構造。周囲に温泉やキャンプ場もでき、観光地としても知られた。

 下流の集落で農業を営む江連百合江さん(53)は3月11日、2度の大きな揺れに襲われ、2人の孫と裸足で家を飛び出した。すると、ダンプカーが近づくような音が響き、山の尾根越しに黒い水が渦を巻いて押し寄せてくるのが見えた。決壊したダムから流れ出た約150万トンの水が一気に集落に押し寄せた。隣の家は流木につぶされ、住んでいた小針トシさん(73)が亡くなった。

 別の集落にある二瓶美代さん(84)の自宅にも、1メートルの高さの水と流木が流れ込んだ。「2階に避難しようとしても上がれず、柱にしがみついた。35年住んでいて初めての恐ろしさだった」。一緒にいた友人は約10メートル流され、桜の木につかまって助かったという。

 14歳から89歳の男女7人が犠牲になった。1歳の男児の行方は今も分かっていない。住宅の全壊19戸、床上・床下浸水55戸。現場は流木と岩に覆われ、橋の欄干はもぎ取られた。水が流れ出た湖は干上がり、往時の面影を残すのは湖畔に咲くサクラだけだ。

 県によると、ダムは土を盛ってコンクリートブロックで覆って造られていた。老朽化で水が漏れたため、県が94年度までにセメントを注入するなどの改修工事をした。被災した住民によると、その後も「水が漏れていて耐震性に問題がある」と補修を求めていたという。

 命と家は助かった江連さんだが、農業機械が流されてしまって仕事ができない。「浜通り地方の津波被害が注目されているけれど、内陸部でもこんなにひどい所がある。原発災害と同じように、人災として補償してほしい」と訴えている。(山吉健太郎、竹谷俊之)

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