京大研、臍帯血からiPS細胞!ストック事業向け、変異少なく高品質


 再生医療に使う備蓄用iPS細胞(人工多能性幹細胞)を、京都大iPS細胞研究所(所長、山中伸弥・京都大教授)が、新生児のさい帯血を使って作製したことが、iPS研への取材で分かった。成人の血液から作った場合に比べて遺伝子変異が少なく、高品質という。移植後の拒絶反応が起きにくいタイプの細胞からiPS細胞を作って凍結備蓄し、研究機関などに提供する「ストック事業」の2種類目の細胞。今月下旬にも提供できる態勢が整う。


 今回使ったさい帯血は、神奈川県、東海大病院のさい帯血バンク(2014年閉鎖)で保管されていたもの。血液細胞の型(HLA型)のうち拒絶反応が起きにくいタイプを選び、該当するさい帯血の人とその家族に連絡を取って、14年3月に説明会を開催。同意を得た人のさい帯血からiPS研が作製し、品質などをチェックした後、今年7月末に完成した。


 ストック事業は、再生医療で使うたびに患者からiPS細胞を作ると大幅にかかるコストや作製時間を圧縮するのが狙い。現在のストックは、ある一人の成人の血液から作製された1種類だけで、日本人の17%に適用できる。


 今回のiPS細胞も同じ型だが、さい帯血は生まれたての新生児の血液のため、さまざまなストレスを受けた成人の血液細胞に比べて遺伝子変異が少ない。また、従来より効率よくiPS細胞を作り出せるという。変異があってもただちに危険はないが、理化学研究所などが目の難病患者に患者由来のiPS細胞から作った細胞シートを移植した臨床研究では、2例目のiPS細胞に遺伝子変異が見つかり、移植を見送った経緯がある。


 iPS研は17年度までに日本人の30~50%を、22年度までに大半をカバーできるストックを作る目標を立てている。80%のカバーには75の型が必要。iPS研は全国六つのさい帯血バンクと連携し、年内にもiPS細胞を作る取り組みを始める予定だ。


臍帯血(さいたいけつ)とは


 胎盤やへその緒(さい帯)を流れる新生児の血液。赤血球や白血球、血小板などを作り出す「造血幹細胞」が多く含まれ、骨髄液と同様、白血病などの患者に移植すれば有効な治療手段となる。出産時にへその緒から採取されたさい帯血を凍結保存し、治療に役立てる「さい帯血バンク」は厚生労働省の許可を受けたものが全国6カ所にある。

(毎日新聞 817()230分配信より引用編集)


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さい帯血を使ったiPS細胞作製のイメージ

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/mainichi-20160817k0000m040143000c.htmlより


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