首相が所信表明 働き方改革実現に向け決意

首相が所信表明 働き方改革実現に向け決意
安倍総理大臣は、衆参両院の本会議で所信表明演説を行い、あらゆる政策を総動員してアベノミクスを一層加速し、デフレからの脱却を目指す考えを示したうえで、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現など、安倍内閣の重要課題、働き方改革の実現に向けた決意を表明しました。また、天皇陛下が「生前退位」の意向がにじむお気持ちを表明されたことを受けて、有識者会議で国民的な理解のもとに議論を深めていく考えを示しました。
演説の冒頭、安倍総理大臣は、台風10号などで、北海道や東北を中心に大きな被害が出たことに触れ、防災・減災対策に取り組むとともに、熊本地震や東日本大震災からの復興を着実に進めていく考えを示しました。

そして安倍総理大臣は、「イギリスのEU離脱や、失速する新興国経済。世界経済は今、大きなリスクに直面している。あらゆる政策を総動員してアベノミクスを一層加速し、デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げていく」と述べ、内需を下支えするため、事業規模が28兆円余りとなる経済対策を講じる考えを示しました。

また、安倍総理大臣は、この経済対策について、「キーワードは『未来への投資』だ。一億総活躍の『未来』を見据え、子育て支援や介護の拡充を進める」と述べました。

そのうえで、「一億総活躍の大きなカギは働き方改革だ。働く人の立場に立った改革、意欲ある皆さんに多様なチャンスを生み出す労働制度の大胆な改革を進める」と述べ、長時間労働の是正や「同一労働同一賃金」の実現、それに高齢者の就業促進などに向けた実行計画を、年度内に取りまとめる考えを改めて示しました。

また、安倍総理大臣は、大学などに進学する人を対象とした奨学金について、「来年度から、成績にかかわらず、必要とするすべての学生が、無利子の奨学金を受けられるようにする」と述べたほか、返済の必要がない給付型の奨学金の実現も急ぐ考えを示しました。

そして、安倍総理大臣は、先の通常国会から継続審議となっている、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の承認を求める議案について、臨時国会で早期成立を目指す考えを示したほか、農家の所得向上に向けた構造改革を進めるため、年内をめどに改革プログラムを取りまとめる考えを示しました。

また安倍総理大臣は、沖縄のアメリカ軍北部訓練場の一部返還に向けて、政府が、返還の条件となっているヘリコプター発着場の施設工事を進めていることについて、「北部訓練場の返還は本土復帰後、最大の返還だ。確実に結果を出すことによって沖縄の未来を切り拓いていく」と述べ、沖縄の基地負担の軽減に取り組む考えを強調しました。

外交面で、安倍総理大臣は、まず日ロ関係について「領土問題を解決し、平和条約がない異常な状態に終止符を打つ」と述べ、ロシアのプーチン大統領との会談を重ねることで、交渉の進展に意欲を示しました。

また中国とは『戦略的互恵関係』の原則のもと、関係改善を進めていく考えを示す一方、「東シナ海、南シナ海、世界中のどこであろうとも、一方的な現状変更の試みは認められない」と述べ、中国の海洋進出をけん制しました。

さらに北朝鮮が核実験などを繰り返していることについて、「国際社会への明確な挑戦だ」として、国際社会と緊密に連携して、断固として対応していく考えを示しました。

また、安倍総理大臣は、憲法改正をめぐり、「憲法はどうあるべきか、それを決めるのは政府ではなく国民だ。その案を国民に提示するのは、私たち国会議員の責任だ」と述べ、国会の憲法審査会で与野党の議論が深まることに期待を示しました。

一方、安倍総理大臣は、天皇陛下が「生前退位」の意向がにじむお気持ちを表明されたことを受けて、「天皇陛下のご公務の在り方について、ご年齢やご公務の負担の現状に鑑みるとき、そのご心労に思いを致し、有識者会議で国民的な理解のもとに議論を深めていく」と述べました。