トヨタ史上最高のオープン初月から48ヵ月連続での販売目標達成は、社内どころか社外にも驚きをもって伝えられた。さまざまなメディアで紹介されたが、一番の問いは、「なぜ、寄せ集めの集団が最強の組織に変わったのか? 」である。新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、その問いに答えていくとする。
● 右肩上がりの目標に対して、 なぜ48ヵ月連続で達成できたのか
ご存じの通り、トヨタという会社は自動車販売台数世界一を誇る巨大企業です。世界一である企業は同時に、世界一の誇りを懸けて実績をあげていくのです。
グループである自動車販売会社にも、目標設定や、設定した目標に対する達成率が求められます。
といっても考え方は単純で、その月の販売目標を達成したら、翌月は前月に少し上乗せして目標を設定される、ということ。シンプルですが、これがきついのです。
12ヵ月目くらいまでは、それほど厳しくは感じませんでした。しかし、24ヵ月、36ヵ月とクリアし続けるうち、肉体的にも精神的にも厳しくなっていきます。
48ヵ月連続で達成する頃には、目標は店舗スタート時の約3倍にまで膨れあがっていました。
これを、達成しなければならないわけです。ちなみにスタッフの人数は最初からほぼ変わっていません。
このように説明すれば、48ヵ月連続達成がいかに難しいか、おわかりいただけたかと思います。
ではどうして私の店舗では、右肩上がりに上がっていく目標をクリアし続けることができたのでしょうか。
それは上がっていく目標以上に、スタッフが成長してくれたからです。
48ヵ月というと4年間ですから、スタート時に新人だったスタッフは4年目には中堅社員になっています。
新人と中堅では、経験もスキルも格段に違います。抱えている顧客の数もだいぶ増えています。
このようにスタッフの力が確実に上がっていれば、右肩上がりの目標の達成も難しくはないのです。
なお当時のスタッフのなかには、社内での年間表彰を獲得するまでになった者が3人います。また、今ではリーダーとして店長・マネジャー職で部下を指導、育成している者もいます。
人の成長には限界がないのです。
● リーダーがスタッフに与える4つの要素
私は、チームのリーダーがスタッフに示し与えるべきものとして、4つの「感」があると考えています。
それは、「危機感」「存在感」「達成感」「満足感」です。
まず「危機感」。
危機感といっても、危険や不安、恐怖などではありません。
恐怖感や不安感、プレッシャーを与えてスタッフをコントロールしようとするリーダーはいますが、それではスタッフが縮こまり、後ろ向きになってしまうので逆効果です。
私の考える危機感とは、ほどよい緊張感のようなもの。
私は元来、小心者で心配性なので、常に準備をしたり、何か新しいアクションを起こしたりしていないと落ち着きません。
そんな気持ちをスタッフたちとも共有することが、危機感を与えるということです。
危機感を与える方法としては、詳しくは今後、説明しますが、競合相手の「良いところ」をスタッフに見せるというものがあります。
なお、目標を使って危機感を与えるという方法はよくありません。「今のままじゃ、目標を達成できないぞ」などと脅してしまうと、スタッフが目標を嫌いになり、モチベーションを低下させてしまうからです。
次に与えるものは「存在感」。
働く人がどんなときに力を発揮するかというと、自分が認められているときです。
「このチームにとって自分は欠かせない存在だ」「自分がチームの主役だ」、そのように感じられるとき、人は自分の価値を自覚でき、元から持っている実力を十分に発揮して活躍できます。
逆に、「このチームにとって私はいらない人間だ」と感じると、実力を発揮するどころかやる気をなくしてしまい、さらには周囲の人の足を引っ張る落ちこぼれになってしまうのです。
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