日本は世界有数の災害大国だ。そう痛感する日々が続く。 4月に熊本地震…[続きを読む]
史上最年少の将棋プロ棋士が来月、誕生する。 藤井聡太さんは愛知県瀬戸…
・最新の社説は朝刊休刊日を除き午前5時半ごろ更新します。(編集の都合などで遅れる場合があります)
史上最年少の将棋プロ棋士が来月、誕生する。
藤井聡太さんは愛知県瀬戸市の中学2年生。14歳2カ月でプロとなる四段に到達し、現役最年長の加藤一二三(ひふみ)・九段(76)の最年少記録を62年ぶりに更新した。小4で棋士養成機関の奨励会に入り、4年で難関を突破した大器である。
最高峰のタイトルの一つ、名人も若返りが進む。5月に当時の佐藤天彦(あまひこ)八段(28)が羽生(はぶ)善治四冠(45)を下し、16年ぶりに20代の名人が誕生した。
40代半ばの羽生世代の活躍が続くなか、若手の台頭は未来に向けて明るいできごとだ。
一方で、近年の将棋界は人工知能(AI)を用いたソフトの攻勢にさらされている。
今年の電王戦では、山崎隆之八段(35)がソフト「PONANZA(ポナンザ)」に2連敗した。改良と学習を重ねてきたソフトの形勢判断能力は年々向上し、いまやトップ棋士と互角かそれ以上の実力をもつといわれる。
ソフトは日常の一風景にもなっている。研究に使う棋士が増え、対局でソフト発の新手が指されることもしばしばだ。
将棋は江戸時代初期から幕府の保護を受け、家元制度のもとで発展してきた。いまも主なタイトル戦に棋士は和装で臨む。そんな伝統的な世界が、自動運転車や医療診断の補助などで注目される、AIと人間との協働の最前線になっているのだ。
先端をゆく分野だからこそ、AIがさらに発展したら棋士という職業はなくなってしまうのでは、と心配する人がいる。
だが、知力の限りを尽くす盤上のドラマや、棋士たちの個性が将棋の魅力だ。常に直線的に最善手を選ぶソフトに対し、人間には駆け引きやミスによる逆転がある。だから面白い。
藤井さんも佐藤名人もネット対局などで腕を磨いたデジタル世代だ。しかし2人の持ち味はそれにとどまらない。藤井さんは詰将棋で終盤の力を養った。佐藤名人は大山康晴十五世名人らの棋譜を研究し、自在な棋風を生んだ。昔ながらの鍛錬法が有効である証左だろう。
7月に亡くなった英文学者の柳瀬尚紀さんは将棋ファンとして知られた。1996年に羽生七冠が誕生したとき、「いわば将棋常套(じょうとう)句の視点からでは見えにくいものを羽生天才は見つける」と偉業をたたえた。
次代を担う棋士たちも、柔らかな発想で、人間の「知のかたち」を示す、創造的な将棋を指し続けてほしい。その姿は、AI時代を生きる私たちの手がかりや励ましになる。
トップニュース
(PR)くらべてお得!