日本は世界有数の災害大国だ。そう痛感する日々が続く。

 4月に熊本地震が起こり、8月には台風10号に伴う豪雨が岩手県や北海道などを襲った。ともに多くの人命が失われた。

 災害は各地で毎年のように生じている。一方で、被災地では「この地方で大きな地震はないと思っていた」「こんな大雨や川の氾濫(はんらん)に見舞われるとは」といった声が後を絶たない。

 ギャップはなぜ生じるのか。

 建物の耐震化や治山・治水対策はそれなりに進み、少々の地震や雨では被害が出にくくなった。ただ、活断層の解明をはじめ科学の力には限界がある。地球温暖化に伴って大型台風や集中豪雨といった「極端現象」も増えており、想定を超える大規模な風水害や土砂災害の危険性は全国的に高まっている。

 被災後の「まさか」という嘆きや悔いを減らすには、経験や知見を共有する仕組みが欠かせない。災害列島・ニッポンでの防災・減災の要として、国に専門組織を設けてはどうか。

 全国の事例を分析し、引き出した教訓を他の地域や多種多様な災害の備えに生かす。災害と直接向き合う都道府県や市町村と日常的に接しながら、人手や専門人材の乏しさを補いつつ、臨機応変の対応力を一緒に磨いていく。規模ではなく、そんな機能を重視した組織である。

 防災や災害時の対応には国土交通省や警察・消防、防衛省・自衛隊、厚生労働省をはじめ、大半の省庁がかかわる。それらを束ねるのが内閣官房と内閣府で、事故を含む緊急時の危機管理を内閣官房が、予防から復興までの自然災害対策は内閣府が、それぞれ担っている。

 ただ、内閣府の防災担当は100人ほどだ。他省庁からの出向者が多いほか、内閣府採用の職員も含め1~2年程度で入れ替わる。自治体からも十数人を受け入れているが、研修が主な目的で期間は長くて1年だ。

 熊本地震時には、東日本大震災関連の仕事にかかわった各省庁の職員が何人も、いまの業務を脇に置いて現地応援に入った。自治体との連携を含め、「人」とそのネットワークを生かして機敏に対応することは大切だが、災害は千差万別だ。経験や教訓、対策をきめ細かく継承していくには不安が残る。

 政府は、米英独仏韓などの危機管理組織を調べ、昨年3月にまとめた報告書で「日本の仕組みには合理性があり、機能している」と結論づけた。だが防災対策に終わりはない。より理想的な組織のあり方について、引き続き研究してほしい。