平行平板の共振抑制
先日のエレクトロニクス実装学会講演大会で、トッパンNECサーキットソリューションズの菊地さんが発表した、「プリント配線板の平行平板共振ノイズを低減する共振配線」について、少し掘り下げてみたい。
以前の菊地さんの研究で、平行平板、すなわちプリント基板の電源・グラウンドプレーンの共振ノイズが、間を走る信号線にカップリングノイズとなって現れる、ということが判っていた。今回の研究は、それを逆手にとってプレーンの共振ノイズを配線の共振によって吸収できないか、というのが発端だそうだ。
さて、今日最も多く使われているプレーン共振の抑制方法は、デカップリングすなわち電源-グラウンド間に適切な配置で適切な値のパスコンを入れる方法だ。共振周波数での電界を見て、強い部分にコンデンサを配置すると、そこが節となって共振を抑えられる…というのはタテマエで、その状態でもう一度解析してやると単に共振周波数がズレただけに終わるというのが実際のトコロ。考えてみれば、コンデンサというのはある意味平行平板と等価で、それを付加したところでプレーンのサイズが大きくなるだけなのだからアタリマエといえばアタリマエ。実際にはESRとESLの効果で話はそう単純ではないが、モグラ叩きに終始する可能性もある。
菊地さんの共振配線というアイディアは、積極的に共振を吸収しようとしている(終端抵抗でエネルギーを消費する)意味では、単なるパスコンの追加より効果的かもしれない、と見ることができる。
そういう意味では、別の発表でイトケン先生が講演された「テイコン」は、共振周波数をずらしつつ抵抗で消費する仕組みなので効果は高いと思われる。事実、プレーン共振を抑える「スナバー回路」として、プレーン端にコンデンサ+抵抗を入れるテクニックは使われてもいる。ただし、コンデンサと抵抗を直列に入れるのでインダクタンスの増加はどうしても避けられず、高い周波数までは対策できない。DesignCon 2007で発表のあったESRの大きいコンデンサの登場を待つしかなさそうだ。
さて。
菊地さんの研究は、2枚の長方形のプレーンと、間に挟まった共振配線パターンのみという至極単純なモデルで検討されている。
しかし、実際に問題となるプリント基板には、プレーンとプレーンの間に数多くの配線パターンが既に走っているはずだ。共振配線がプレーンの共振特性に影響するのであれば、すでに走っている配線パターンも共振特性に寄与するのではないか。つまり、プレーンの共振を解析する際、間を走っているパターンを無視できないハズだと考えるのが妥当だ。
ところで、昨今の電源ノイズ対策ツールの中にはプレーンの共振解析機能を持ったものがあるが、いずれもプレーンのみを解析対象にしており、配線パターンは共振の寄与要素として考慮されていないと見られる。具体的には、NECのDEMITAS-NX、AnsoftのSIwave、そしてSigrityのSPEED2000といったツールがそれだ。これらのツールは、プレーンの共振対策としてパスコンを、どこにどれだけ追加すればよいか検討することを主眼にしている。おそらく、菊地さんの研究と同じことを、これらのツールをas isで使ってみても解析できないのではないかと思う。
すると、実際に設計の現場で菊地さんのアイディアを使って適切な共振配線を求めることは、現存するツールの範囲では極めて困難を伴うのではないだろうか。配線パターンが共振に寄与するとしても、それらを考慮に入れて共振周波数(と電界分布)を正確に求めさえすれば、必要な共振配線を求めることは(理論的には)できるハズだ。しかし、無数にあるパターンをも要素として取り込んで解析するにはリソースが足りないのではないかと思う。
アイディアそのものは非常に面白いので、実践に持ち込める方法が見いだされることを期待したい。
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