広告は「モテたい」。
山本高史:ぼくは1961年生まれで、年齢だとみうらさんの3つ下になるんですね。みうらさんは、実はずっとぼくの憧れの人でありまして。
みうらじゅん:何をおっしゃいますか。やめてくださいよ(笑)。
山本:『やりにげ』も破れるくらい読んでいました。それで今回本を出しましてね。『広告をナメたらアカンよ。』という本なんですけど、その中で「広告はモテない。でももっとモテていい」ということを言っているんです。それでですね、今日はみうらさんと「モテる」ということをテーマにお話をさせてもらえればと。そもそも広告って、いらないと思われているじゃないですか。
みうら:そんなこと思われているんですかね。
山本:例えば、いくら広告関係者でも、テレビCMを見ようとしてテレビをつけないじゃないですか。
みうら:まあまあ、それはそうですね。
山本:呼んでいないのに来くるし、「テレビ番組を見ようと思っているのに、なんでそんな邪魔するの?」と。まあ要するに、広告って「モテない男子」みたいだなと思ったんです。「私、今日ドラマくんと2人で過ごそうと思っているのに、何で広告くんが来たの?」みたいな。
みうら:モテない男子ね(笑)。うちの子どももCMというのがすごく不思議みたいで、「なんで良いところになったらCMになるんだ!」って言うんですよ。「このCMがいなかったら『妖怪ウォッチ』は見られないんだよ」と一生懸命説明するんだけど、ピンとは来てないですよね(笑)。
山本:大学生でもその理屈をいまいち理解してないですからね。ぼくも広告がモテないのは、正確にはモテにくいですが、それを仕方ないなと思っていたんです。でも大学教授になって教えはじめたのを機に、いくら仕方ないなと言っても、広告がモテないということを教えるというのは、おかしな話だと思ったんです。それで「実は広告は振り返ってもらうためにこれだけのことをやっている!」という、ぼくなりの考えを展開してみたのが、この本の元になった『宣伝会議』での連載だったんです。
みうら:なるほどね。人間の話ですけど、モテない、というか本当に全然モテないって思っている人は世の中に結構いますからね。そしてモテない人ほど、モテないことに対して敏感なんですよ。モテないことって、どうしてもネガティブに捉えられがちじゃないですか。でも本当は面白いことなのかもしれないと思うんですよね。ぼくは昔「モテないが正しい」という連載をやっていたこともありましたから。
山本:モテてしまうと、今度は「お前にはモテない人間の気持ちはわかない」とか言われますもんね。
みうら:モテたらモテたで難しいんですよ(笑)。どこまでをモテるとするのかも、よくわかんないですからね。もう国会で決めてほしいですよね。「モテる」ということの定義を。
山本:わが国では、そのあたりは曖昧ですよね。
みうら:モテ期というのもありますけど、あれもなかなか比較できないですからね。
山本:ある人のモテ期とある人のモテ期とで、えらい違ったりしますからね。
みうら:ぼくはあんまり「ものを売っていく考えの言葉」というか、プラスの言葉に興味がないというか、本当?って思っちゃう。プラスの言葉って、人を不安にさせるじゃないですか。そういう時期が本当にあるとなると、モテ期が来ていないとマズイんじゃないかという発想が生まれてくる。商品も今の売り方でよくあるのは、「みんな持っているし、持っていないとマズイですよ!」とかですよね。
山本:そうですね。不安とか不足があるからものを買うんです。
みうら:ぼくは不安になったら「不安タスティック」って呪文を唱えているんですけどね。本当は不安が原動力ですから。
山本:ちょっとでもモテてみると、「こういうモテ方がいいのか」とか「いや、でもモテているというのは主観ではないか」とか「というか、おれって誰にモテているんだ」とか、色々な雑念が出てくるけど、モテないというのはとりあえず「空」ですもんね。
みうら:そう、空の状態。モテていないということだけははっきりしていますからね。その分自由ですし、逆に安定している。必ずしもモテなくていいんじゃないですかね。
山本:モテない方がいいこともあると。納得しちゃいかんな。
みうら:うん、妄想は無限に広がるし、モテる人ができないことを、モテないからこそできますからね。
山本:ちなみに、今回は「モテない」「モテたい」だけじゃなくて、一応「広告」もテーマなんですが、みうらさんはどんな広告がお好きですか。
みうら:広告ってあまり意識して見てこなかったんですよね。でも例えば、ぼくが小学校の頃は『ウルトラマン』のオープニングが「♪タケダ、タケダ、タケダ…」から入っていて、番組と武田薬品工業の広告がセットだったんですよね。
山本:タケダの大阪工場の空撮映像ですね。
みうら:そう、そう。テレビCMがいわば番組の一部だったんです。『マグマ大使』を見て、マグマ大使のガムを箱買いしていました。そういう意味では、まんまと広告にやられていたというか(笑)。あの頃の広告は違和感なく入ってきていたし、番組に馴染んでいましたよね。
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