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C・ローパー購入の被災ピアノ 病院で再生へ

津波で被災したピアノを修復する井上さん(左)
シンディ・ローパーさん

 米国の歌手シンディ・ローパーさんが東日本大震災で被災したグランドピアノを買い取り、宮城県石巻市の石巻市立病院に寄贈する。8月10日の開院記念式典で披露される。市内の楽器店「サルコヤ」が修復を進めており、経営者の井上晃雄さん(87)は「良い状態に再生させたい」と作業に心を込める。
 寄贈されるピアノは井上さんの知人が使っていたが、津波で水や泥をかぶった。側面の板や脚に傷が入り、200本以上の弦が外れるなどして壊れた。取り扱いに困っていた知人から震災直後に引き取り、倉庫に保管していた。
 寄贈のきっかけは、復興支援の目的で来日したローパーさんが通訳の紹介で店に立ち寄った2012年3月。店は約1.7メートル浸水し、ピアノ30台が被災。井上さんが修復に当たっていた。再生させたピアノを見たローパーさんが関心を持ち、被災ピアノの購入と市への寄贈を申し入れたという。
 井上さんはJR石巻駅前に移転新築される市立病院の完成に向けて今年2月、ローパーさんが購入したピアノの修復作業に従業員らと着手した。さびた弦や金属部品を交換し、傷の付いた板を塗装したり鍵盤の汚れを拭き取ったりした。海水に漬かった木製の部品は超音波洗浄器で塩分を除去し、乾燥させた。
 9割ほどの作業を終え、調律に力を入れる。交換した弦は張り具合が安定するまでに一定の時間がかかるため、棒でたたいたり、こすったりしてなじませている。井上さんは「みんなに望まれて修復されるピアノほど恵まれたものはない。市立病院で末永く患者さんを癒やしてほしい」と期待を寄せる。


2016年07月22日金曜日

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