豪栄道、史上初カド番全勝!綱へ前進
◆大相撲秋場所千秋楽 ○豪栄道(寄り切り)琴奨菊●(25日・両国国技館)
14日目に初優勝を果たした東大関・豪栄道が西大関・琴奨菊を寄り切って、史上初のカド番全勝Vを成し遂げた。
初優勝が全勝となるのは1994年名古屋場所の大関・武蔵丸(現・武蔵川親方)以来22年ぶり7人目。横綱審議委員会の守屋秀繁委員長(75)は九州場所(11月13日初日・福岡国際センター)が綱取り場所と明言。初のカド番優勝から綱取り成功の偉業に挑む。殊勲賞には東前頭筆頭・隠岐の海、敢闘賞に東関脇・高安、技能賞に東前頭14枚目・遠藤がそれぞれ選出された。
15個目の白星も豪栄道は仁王立ちで締めくくった。琴奨菊をもろ差しから赤房下に寄り切り。両足を開き相手を見下ろすポーズは、今場所何度も繰り返した勝利の象徴。「気持ちが切れかけたけど、持ち直していい相撲が取れた。もう大満足です」。前日の涙の初Vでゆるみかけた手綱を締め直して新たな歴史を刻んだ。
凱旋した前夜。携帯電話には膨大なメールが届いていた。「200件以上あった。知らない携帯番号からも入っていた」。ゲン担ぎで場所中は話さなかった師匠の境川親方(元小結・両国)とも今場所初めて言葉を交わした。「帰りの車の中で『おめでとう』ってね」。部屋にはお祝いの花が7つ。祝福ムードと緊張からの解放で星を落とす可能性もあった。だが、大関の気迫は土俵に上がると一気に回復した。
場所3日前から酒を断つルーチンを、今年春場所から導入。飲めない体質ではないが「酒飲むと遅い時間になる。普通に考えると体にいいわけない」。場所中に焼き肉を食べに行っても飲むのは緑茶。さらに、「酒の席って楽しいじゃないですか。そういうのをひとつ我慢することで、場所中の結果に結びつくんじゃないかと」。徹底した心身の自己管理で積み重ねた自信が、無敗街道を支えた。
カド番優勝を果たした過去7人は、翌場所で全て優勝と横綱を逃している。その後、横綱になったのは貴乃花(現・貴乃花親方)のみ。昇進3場所前に負け越し(7勝5敗3休)、綱をつかんだのは1941年5月場所後の羽黒山までさかのぼる。「正直、今はあまり考えられないけど、来場所に向けて精いっぱい努力します」と難関に挑む決意を示した。
表彰式で初めて賜杯を抱いた。「重かった。優勝の実感? そうですね」と29キロ以上の重みを感じ取った。その直後、館内に響いた豪栄道コールは和製横綱への期待の表れ。後援会でも横綱土俵入り用の三つぞろえの化粧まわし制作の検討に入った。歴史を塗り替えた男は不可能を可能にしてしまうかもしれない。(網野 大一郎)