廃止、諦めない…各地で抗議集会
安全保障関連法の成立から1年となった19日、国会前で抗議集会が開かれ、市民らが「みんなで憲法守ろう」「廃止まで諦めない」と反対の声を上げた。成立後、日本の安全保障環境は厳しさを増し、自衛隊の新任務である駆け付け警護の付与も秒読み段階だが、安保法制を巡る安倍政権への批判はやんでいない。【山崎征克、柳澤一男】
◇「受け入れ、修正の過程」…専門家指摘も
雨の中で「自衛隊員の命守ろう」というプラカードも見える。主催団体によると、参加者は約2万3000人で、この日全国400カ所以上で抗議行動があったという。
国会前には野党の国会議員も姿を見せた。民進の岡田克也前代表は「憲法違反の法律は何年たっても憲法違反。それを廃止するのが国会の仕事だ」と訴えた。また、憲法学者の清水雅彦・日体大教授は「9割の研究者が違憲と考えた。どう考えても憲法に反しているのに、それが分からない首相は早く退いてほしい」と力を込めた。
参加者からは、安保法制の違憲性だけでなく、拡大した自衛隊活動や安倍政権の姿勢自体への疑問や不安の声が相次いだ。
千葉市稲毛区の無職、菅原軍次さん(73)は「海外で軍事力を行使すれば、必ず報復の標的にされる」と心配した。千葉県柏市の会社員、鬼木大輔さん(30)は「福島の原発事故で考え方が変わった。原発再稼働も安保も数の力で進める安倍政治にノーと言いたい」。埼玉県ふじみ野市の団体職員、武田梨華さん(38)は「消費増税など生活への負担は大きくなっているのに社会保障の充実は感じない。人に優しい政治を」と望んだ。
一方、各地で展開されたデモの参加者について「安保法制にやみくもに反対しているわけではない」と見る専門家もいる。
日本大危機管理学部の福田充教授は昨年の安保関連法成立前、研究室で参加者約400人にアンケートを実施した。大部分が「審議がしっかりなされていない」とする一方で、20代までの80%(30代以上の66%)が「日本一国で平和の維持は困難」と感じ、67%(同37%)が「世界情勢に合わせて安保政策も変わっていくべきだ」と答えた。
福田さんは「政府は説明責任を十分に果たさず、数の力で押し切った。安保法制には問題点もある」と指摘。その上で、日本人が犠牲になったバングラデシュでのテロや、北朝鮮が繰り返す核実験やミサイル発射などを踏まえ、「国際情勢を国民は冷静に見ている。夏の参院選でも与党が勝利した。今は社会が時間をかけて安保法制を受け入れ、修正していく過程にある」と分析する。