2026年の夏季アジア競技大会は愛知県と名古屋市の共催で開かれることが25日、決まった。愛知県にとって05年の愛知万博以来の国際的な大規模イベント。1988年の夏季五輪招致に失敗した名古屋市にとっても悲願のスポーツ大会招致となり、地元は歓喜に沸いた。2027年のリニア中央新幹線開業を控え、国内外の知名度アップに期待が高まるとともに、費用抑制といった課題に取り組む必要がある。
「たった今、愛知・名古屋に開催地が決まりました」。名古屋市中区の愛知県庁では25日午後1時ごろ、職員ら約20人がベトナム・ダナンで開いたアジア・オリンピック評議会(OCA)総会のインターネット中継で、決定の瞬間を見守った。
万歳三唱の後、中西肇県副知事は「感動している。大会を成功に導き、アジアの交流を深める有意義な大会にしたい」と話した。新開輝夫副市長も「正直、ほっとした。ただ、ここからがスタート」と語った。
かつて夏季五輪の誘致に奔走した人々からも喜びの声が上がった。
愛知県豊明市在住の元名古屋市職員、高木勝義さん(74)もその一人。「開催都市としての名古屋の魅力を世界にアピールする絶好の機会となる」と力を込める。
高木さんは1978~82年まで、名古屋市のオリンピック対策室の主査として、88年の夏季五輪招致に携わった。韓国・ソウルと一騎打ちとなり、名古屋優位との下馬評だったにもかかわらず敗れた。「がっくりした。なんとしても国際大会を開くんだという意識が足りなかった」と振り返る。
アジア大会誘致の過程では名古屋市が一度立候補を取り下げた。高木さんは10年後の開催に向け、「施設やインフラ面では問題ない。大会を成功させるには、市や県、住民が一体となって力を合わせられるかが問われる」と指摘する。
今回、県と市は既存施設の活用による経費削減に加え、ものづくりの集積地であることを生かした先端技術の活用などを大会コンセプトとして掲げた。競技運営、交通輸送、スポーツ観戦で先端技術を駆使することで、ものづくりが盛んな地域であることをアピールする狙いだ。
アジア大会は選手だけで1万人規模が見込まれる。リオデジャネイロ大会で選手1万1000人以上が参加した夏季五輪に次ぐスポーツイベントだ。広島市によると94年の広島アジア大会は111万人超の観客を集めた。愛知・名古屋大会はリニア開業を控えた時期だけに、国際的にアピールする絶好の機会になると関係者は期待している。