沖縄県の本島北部、東村と国頭村にまたがる広大な森の中。いま、ここでは米軍が訓練に使うヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)の工事が進んでいる。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】
太平洋戦争中、国内で唯一米軍との地上戦となり、18万8136人が犠牲になったこの島には、在日米軍基地の74%が集中している。
9月22日には、米海兵隊の戦闘攻撃機が海上に墜落する事故が発生。1972年の本土復帰後に県内で起きた墜落事故は、これで46件になった。
そんな中での新たな米軍基地建設に対し、県民の大多数は反対している。しかし政府は、建設の方針を変えようとはしない。
そこに生きる人たちは、いったい、何を感じているのか。BuzzFeed Newsは9月中旬、現場を訪れた。
ヤンバルクイナの鳴き声が聞こえる木々の間を、1本の県道が貫く。日本最大の米軍専用施設「北部訓練場」が広がるこの地域では、東村の高江区などを中心に、6つのヘリパッド建設が予定されている。
うち2つは昨年に完成し、オスプレイが離発着訓練をはじめた。以前から抗議を続けてきた人たちは、政府が工事を再開した7月22日以降、車両の通行を防ぐための座り込みなど反対運動を強めている。
それに呼応して、現場には400~500人の機動隊が集まっている。県内だけでなく、警視庁、大阪府警、福岡や神奈川県警などからも動員。抗議活動との間で緊張が高まり、逮捕者も後を絶たない。
記者が現地を訪れた9月13日、頭上の真っ青な空では、陸上自衛隊のヘリコプターが、米軍基地を建設するための重機や車両を運んでいた。米軍基地の建設に自衛隊機が協力するのは、異例だ。
その翌日、地上では、機動隊車両が道路を封鎖した。基地を建設する車両の往来を防ごうと座り込んでいた人たちは、次々と隊員に担がれて排除されていた。
それが、いまの沖縄・高江の日常だ。
抗議活動のリーダーである山城博治さん(64歳)はBuzzFeed Newsの取材に「県民に対する抑圧、差別だ」と憤る。
現在の沖縄県うるま市生まれ。県職員として労働組合に関わったのち、10年以上前から沖縄平和運動センター議長として、米軍基地の反対運動に携わる。米海兵隊の基地建設が始まろうとしている、名護市辺野古での抗議活動も引っ張ってきた。
「県民は基地建設にノーと言い続け、反対運動をしている。それを機動隊を動員して、弾圧する。ありえないことですよね。沖縄は、必死に耐えているんです」
「本土と沖縄の対立をつくる気は、毛頭ありません。でも、沖縄に犠牲を押し付けてのうのうと安心して暮らしている人がいる。基地に反対をすると『反日だ』という人もいる。私たちは、平和を願ってはいけないんですか」
沖縄の基地反対運動に対して、インターネット上で「反日勢力」「カネをもらってやっている」などの書き込みが止まらない。しかし、山城さんは県民の声を聞こうとしない政府や、ネット上の批判ではなく、恐れているものがあるという。
「『知らない、見ない、聞きたくない』。権力の暴走よりも、批判よりも、国民の沈黙の方が怖いですよ」
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