中古品の買い取り価格を比較する『ヒカカク!』という口コミサイトがあります。この運営会社に対して、札幌市の中古車販売業者が、「社名が無断で使用された」「事実と異なる情報が掲載された」として削除を求める申し立てをし、札幌地方裁判所が商標権侵害を認めた仮処分決定をを発令した、と各メディアで報じられています。
申立人の代理人弁護士によると、商標権の侵害を理由に、口コミサイトの情報削除を命じた仮処分決定は全国ではじめてではということで、「口コミサイトの在り方に一石を投じるのではないか」と話しているそうです。たしかにこのような請求が認められるとすると、口コミサイト存亡の危機となり得ます。
このような請求は認められるべきなのでしょうか。

*画像はイメージです:http://www.shutterstock.com
■商標権の侵害とするには“商標的使用”の認定が必要
商標権が侵害されたとするためには、ある行為の態様(状態、ようす)が、“商標的使用”であると言えることが必要です。すなわち商標には、自他識別機能(ある商品やサービス等が自身のものか他者のものかを識別することができる機能)や、出所表示機能(ある商品やサービス等が誰が提供するものかを明示する機能)がありますが、これを害する態様で商標が使用されなければ、“商標的使用”とはいえません。
口コミサイトに社名が掲載されていても、サイト内において社名が特定されるだけであり、自他識別機能や出所表示機能が害されているとは通常言えません。
たとえば、『iPhone』は商標登録されていますが、単にiPhoneという表示をしただけ、あるいはiPhoneを紹介したとしても、商標権侵害とはなりません。これは、自他識別機能や出所表示機能が害されているわけではないからです。
実際に問題の口コミサイトを見てみましたが、社名の使われ方は単に会社を紹介をする形になっており、自他識別機能や出所表示機能が害されているとはいえないと思われます。
したがって、口コミサイトに社名が掲載されているということをもって、商標権侵害とすることは不可能であろうと思われます。
商標権侵害があるとして削除が認められるとすれば、“批評に晒されない権利”のようなものを認めるに等しいですが、それは明らかに行き過ぎです。誹謗中傷は許されませんが、正当な批評は当然許容されるべきものです。
札幌地方裁判所は商標権侵害を認めたということですが、この点は明らかに誤りであると思われます。
■なぜ札幌地方裁判所は商標権侵害の仮処分決定を発令したのか?
純粋に裁判所が判断を間違ったという可能性があります。
しかし、報道によれば「事実と異なる口コミがあった」ということにも触れられています。仮処分決定においては、通常、その判断に至る理由が記載されず、決定の主文だけが記載されます。
そのため、実際には「事実と異なる」という理由で仮処分決定が発令されたにもかかわらず、申立代理人が商標権侵害も主張していたため、商標権侵害の点も含めて裁判所が認めたと誤解されているということが考えられます。
問題の口コミサイトを見てみると、たしかにひどい口コミもあるように思われます。そのため、口コミの内容が事実と異なるものであれば、その部分について削除することは可能と思われるものも含まれています。
報道によると、決定を命じられた口コミサイト側は対応を検討しているということですが、仮にサイト全体の削除を命じられているといった事情があるのであれば、商標権侵害を理由とした削除が命じられている可能性が高いでしょう。
商標権侵害を認めているというのは明らかにおかしい判断であると思われるため、その場合にはぜひ異議を申し出てもらいたいと思っています。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
【画像】イメージです
*rassco / Shutterstock
【関連記事】
*もしも交通違反をしたのに反則金も呼出状も無視し続けたら、どんな罪が待っている?
*アイドルグループ解散のきっかけとなった不倫騒動。原因の「小倉優子の夫」を事務所は訴えられる?
*ゴルスタ運営スタッフによるユーザー情報漏えい問題、ユーザーは運営元に損害請求することは可能か?