加えて、被害女性を含めた他の関係者から聞き取りができていないにもかかわらず、弁護側が〈知り得た事実関係に照らせば、高畑裕太さんの方では合意があるものと思っていた可能性が高く〉と言い放つ点にも首を傾げざるを得ない。
一方、精神科医の片田珠美氏が問題視するのは次の部分だ。曰く、
合意のもとに性行為が始まっても、途中で女性が拒否すれば強姦罪になることがある。ただ、女性の拒否の意思が伝わっていなければ〈故意がないので犯罪にはなりません〉。
「法解釈はともかく、この表現は明らかに誤解を招きます。というのも、性犯罪者の多くは“相手が喜んでいると思った”と証言するからです。起訴されると有罪判決が下されかねない加害者が、自分を正当化するのは当然のこと。被害女性の声を無視した、加害者の思い込みがまかり通ってしまったら、法は機能しなくなると思います」(片田氏)
結局、晴れて自由の身となったものの、“灰色決着”の印象は拭えないのである。もちろん、芸能界復帰への道は閉ざされたままだ。
「未成年者との淫行事件で吉本興業を解雇された極楽とんぼの山本圭壱は、裕太と同じく示談の末に不起訴処分になりましたが、地上波の番組に復帰するまで10年かかった。ただでさえ、事件の影響で番組の撮り直しや、お蔵入りが相次いだワケで、リスクを負ってまで彼を使うメリットはない」(先の民放関係者)
放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏も手厳しい。
「釈放と聞いて、釈然としない人がほとんどだと思います。彼は警察の取り調べに対して“女性を見て欲求を抑えられなかった”と供述したのに辻褄が合わない。仮に女性との間に合意があっても、映画に出演させてもらっているのにロケ先のホテルで従業員と関係を持つこと自体、不謹慎です。仕事に対する姿勢が甘すぎる。所属事務所も冤罪を信じているなら、釈放直後に解雇はしなかったと思う」
母親が涙の記者会見を開き、多額の示談金を積んで手にした待望の“釈放”も、不肖の息子の人生に逆転をもたらすことはなかった。
「特集 誰も解説しない『高畑裕太』釈放から読み取れること」より
「週刊新潮」2016年9月22日菊咲月増大号 掲載
新潮社
読み込み中…