AI人材 国際的な争奪戦激化 日本でも技術者確保の動き

AI人材 国際的な争奪戦激化 日本でも技術者確保の動き
AI=人工知能を活用したビジネスが広がり、技術開発などを担う人材の国際的な争奪戦が激しくなる中、日本では、AIを専門にしたインターンシップ制度を始めるベンチャー企業が登場するなど、早い段階から専門の技術者を確保しようという動きが広がっています。
このうち都内のベンチャー企業は、企業のウェブサイトの運営を支援する事業を手がけていて、検索サイトのデータから顧客や消費者のニーズをAIを使って分析しています。こうした分析作業を担う技術者は現在10人ほどいますが、事業の拡大に合わせて社員を増やしたいと考えています。
このため、転職サービス会社に依頼したり、求人広告を出したりしていますが、大手や海外の企業との間で限られた人材を奪い合う状況で慢性的な人手不足が続いていました。
このため、今月からAIを専門にした5日間のインターンシップを開始し、全国の大学などから参加者を募集しました。
職場では、AIを活用した新たな事業の企画立案や、並べられた2つの英文の共通点や相違点をAIを駆使して見つけ出すという言語分析などの作業を日給2万4000円を支払って体験してもらいました。
体験をした京都大学大学院の学生は「自分の研究をどうやってビジネスにつなげるかが体感でき、非常に楽しかった」と話していました。
ファベルカンパニーの副島啓一取締役は「優秀な人工知能の専門家を採用できるかどうかで企業の成長スピードは変わってくる」と述べて、6人の学生が参加した今回に続き、今後もインターンシップを行う考えを示しました。
AIを含めたIT分野の人材をめぐっては、富士通やNTTデータ、それにディー・エヌ・エーなどもインターンシップ制度の導入を進めていて、企業の間では早い段階から専門の技術者を確保して育成しようという動きが広がっています。

AI人材 国際的な争奪戦が激化

人工知能の研究者や技術者の国際的な人材獲得競争は激しさを増していて、特にアメリカの大手IT企業は、企業を買収することで人材をまるごと獲得する戦略を進めています。
このうちグーグルは、2013年に人工知能研究の権威として知られるカナダのトロント大学の教授らが設立したベンチャー企業を買収しました。また、2014年にはイギリスの人工知能関連のベンチャー企業を4億ドル(日本円でおよそ400億円)という会社の規模からすれば破格の金額で買収しました。
この企業は、人工知能を駆使した囲碁のコンピューターソフト「AlphaGo」を開発し、勝つことが難しいと言われたトップレベルの棋士にことし勝利し、世界に大きな衝撃を与えました。

フェイスブックは、AI研究の第一人者を招いて2013年に人工知能研究所を設立し、関連のベンチャー企業を相次いで買収したほか、アップルも人工知能の技術者を獲得するため、去年とことし、ベンチャー企業を次々に買収しました。

中国の検索大手バイドゥも2014年、AIの研究所の所長にグーグル出身の大物研究者を招くなど、人材の獲得競争は世界に広がっています。

AI人材獲得 日本は

日本の企業では、トヨタ自動車がことし1月、自動運転のための人工知能を研究する会社をアメリカのシリコンバレーに設立し、グーグルからロボット開発のトップを引き抜いたと発表しました。
また、リクルートホールディングスも去年11月、シリコンバレーに人工知能の研究機関を新たに設け、グーグル出身の著名な研究者をトップに起用するなど、研究開発の強化に乗り出しています。

しかし日本では、人工知能の研究者がそもそも不足しているうえ、人工知能を活用するための技術開発も遅れていると指摘されています。
こうした状況を受けて、東京大学がことし6月、トヨタ自動車やパナソニックなど8社から合わせて9億円の寄付を受け人工知能の先端技術を教える寄付講座を開設するなど、人材の育成に向けて企業と大学が連携する取り組みも始まっています。

政府も人工知能の人材育成に向けて体制の整備に乗り出しています。総務省が日米の就労者それぞれ1100人余りを対象にことし行ったアンケート調査では、「人工知能の知識・スキルを習得する」と答えたのは、日本では28%にとどまった一方、アメリカでは46%を占め、両国の差が浮き彫りになっています。
こうしたことから政府は、AI時代の即戦力となる人材の育成方法などを検討するため、ことし4月に産学官の戦略会議を発足させ、国を挙げて人工知能分野の開発体制の整備を急いでいます。