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 わなでイノシシを捕まえ、食肉に加工する学生のグループがいる。九州大学(福岡市)の「狩り部(狩猟研究会)」。自然と人間とのつながりを再認識し、命を見つめ直す活動だ。

 8月中旬。うだるような暑さの中、民家からほんの少し入った竹やぶの中に設置した箱わなに、体長約1・2メートル、体重30キロほどのイノシシが1頭入っていた。

 「乳が張っている。メスですね」。狩り部顧問で、環境社会学などを専門とする九州大学基幹教育院の安田章人准教授(34)が言った。腕には駆除の許可を示す「有害鳥獣捕獲等従事者」と書かれた腕章が巻かれていた。

■きっかけは獣害対策

 ここは、福岡市西区と福岡県糸島市にまたがる九州大伊都キャンパスの構内。イノシシは人の気配に気づくと興奮し、金網に体をぶつけた。連絡を受けて集まった学生部員らが見守る中、安田准教授はイノシシを動かないようにすると、ナイフでとどめを刺す「止め刺し」(殺処理)を素早く行い、手を合わせた。

 イノシシはすぐに、キャンパス内に今年3月に出来た簡易解体所に運び込み、集まった部員5、6人で食肉用に解体・加工した。ナイフを使って皮をはぎ、肉と内臓に分けていく。

 「熱(あ)っつ!」

 心臓をつかんだ理学部1年の男子学生(18)が、思わず叫んだ。

 「心臓は温かいんじゃなくて、熱いんです。直前まで生きていた命をいただく、ということが実感できるはず」と安田准教授は話す。

 部の設立は2014年7月。安…

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