豪栄道、14連勝でカド番「ダメ大関」から涙の初V!

2016年9月25日6時0分  スポーツ報知
  • 14連勝で初優勝を決めた豪栄道は万感の表情で喜びをかみ締めた

 ◆大相撲秋場所14日目 ○豪栄道(寄り切り)玉鷲●(24日・両国国技館)

 東大関・豪栄道(30)=境川=が悲願の初優勝を果たして号泣した。西前頭6枚目・玉鷲(31)=片男波=を寄り切りで下して14連勝。カド番での優勝は2008年夏場所の琴欧洲(現鳴戸親方)以来8人目だ。千秋楽で史上初のカド番全勝Vを目指し、九州場所(11月13日初日・福岡国際センター)では98年夏場所後の3代目・若乃花以来となる日本出身横綱昇進に挑む。

 豪栄道は仁王立ちして、口元を引き締めた。右を差して一気に玉鷲を寄り切った。土俵下で水を飲むと、満員の国技館にコールが響いた。その時は、まだ涙はなかった。「勝った後は、しばらく興奮して感傷に浸る暇がなかった」。花道を引き揚げ、NHKの優勝インタビューを受けると我に返った。「つらい日もあったけど今日で少し報われた。うれし涙です」。悲願の初優勝。こみ上げるものが細い目からこぼれ落ちた。

 13日目を終えて2差からの逆転は過去に例がない。V確率100%。「アホみたいに(祝福の)電話がかかってきた。まだ終わってないっちゅうねん」。周囲の楽観ムードに、10日目から感じていた重圧が限界を超えた。キングサイズの硬めのマットレスに160キロの体を横たえても眠気は来ない。気がつけば朝だった。「体を休めよう」。今場所初めて朝稽古を休んだ。はたから見るほど初Vは簡単ではなかった。

 重圧と闘い続けた2年間だった。「大関ってどういう地位なんですか?」。14年名古屋場所後の昇進直後、親交が深く同じ地位を経験した二子山親方(元大関・雅山)に助言を求めた。「勝って当たり前で内容も問われる。精神的にも厳しい。なってみて初めて分かるんだよ」。激励のつもりの言葉だったが、強すぎる責任感を持つ豪栄道は本来の相撲を見失った。強さを誇示しようと相手を一気に土俵外に運ぶ相撲に固執し、自分の体勢をつくって前に出る持ち味が薄れた。右手首、左肩、顔面と度重なるけがに襲われ、4度のカド番という屈辱を味わった。同親方も「余計なことを言ってしまった…」と後悔する悪循環に陥った。

 昇進から先場所まで2ケタ勝利はわずか1度。“ダメ大関”と批判される陰で必死に爪を研いでいた。12勝した春場所では九州、栃木、神奈川から整体師とトレーナーを呼び寄せ、体をケア。肉好きを公言する男が「体にいい物を食べる」と野菜の摂取にこだわり、インスタント食品は絶対に口にしなかった。「原動力? 悔しさが一番ですよ」。体調を整え、思いを土俵にぶつけて結果を出した。

 千秋楽には史上初のカド番での全勝優勝がかかる。その先には稀勢の里が3場所連続で挑み、はね返された横綱という最高位への挑戦が待っている。日本中の期待が集まるが「まだ何も考えてない。ちょっと余韻に浸らせてください」と遮った。我慢を重ねて勝ち取った勝利の美酒に、この日ばかりは酔いしれていい。(網野大一郎)

 ◆豪栄道 豪太郎(ごうえいどう・ごうたろう)
 ▼本名 沢井豪太郎(さわい・ごうたろう)。
 ▼生まれ 1986年4月6日、大阪・寝屋川市生まれ。30歳。
 ▼サイズ 183センチ、160キロ。
 ▼エリート 小1から相撲を始め、埼玉栄高で高校横綱ほか11タイトルを獲得。05年初場所で初土俵。06年九州場所で新十両。07年秋場所で新入幕。14年秋場所で新大関。関脇連続在位14場所は昭和以降、歴代1位。
 ▼しこ名 本名の沢井から豪栄道に改名。名前の豪太郎、埼玉栄、高校恩師・山田道紀氏から1文字ずつ取った。
 ▼好物 焼き肉。「食べないと力が出ない」。生魚が嫌いで納豆も苦手。

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