横浜点滴殺人、院内犯か!?院長「否定できない」
横浜市神奈川区の大口病院で入院患者の八巻信雄さん(88)の点滴に異物が混入され殺害された事件で、点滴袋や遺体から殺菌剤などに使う界面活性剤(界面剤)の成分が検出されていたことが24日、捜査関係者への取材で分かった。神奈川署特別捜査本部は、何者かが不特定に患者を狙って在庫の点滴袋に界面剤を混入させた疑いもあるとみて鑑定を急ぐ。高橋洋一院長は、犯人が院内の人物の可能性も否定できないとした。病院では八巻さんと同じ4階に入院していた男女3人が18日以降に相次いで死亡している。
捜査関係者によると、八巻さんが入院していた4階のナースステーションには、在庫の点滴袋が無施錠の状態で保管され、近くには界面剤成分を含む製品があった。点滴袋はその日使用する分が薬剤部から配布され、机や洗面台の横に置かれていた。巡回などで当直の看護師が不在となり、誰でも簡単に手に取ることが可能な時間帯があった。
事件当日、八巻さんが入院していた4階には17人の入院患者がおり、2人の看護師が当直勤務をしていた。19日午後10時ごろ、同フロアを担当した30代の女性看護師が点滴袋を交換。翌20日午前3時ごろに見回りした際には問題なかった。午前4時ごろ、心拍低下のアラームが鳴ったため駆け付けたところ、点滴袋の中に微量の気泡があるのを発見。八巻さんは午前4時55分に死亡が確認された。
八巻さんの点滴袋に目立った穴や破れはなく、特捜本部は、何者かが無差別に患者を狙い注射針などで界面剤を混入させた可能性もあるとみている。
18日以降、同じ4階に入院していた男女3人が死亡。18日に死亡した80代の男性2人はいずれも点滴を受けており、病死と診断された。20日には90代の女性が死亡。特捜本部は、遺体の状況などから一部は病死ではなく不審死の可能性があるとみており、週明けにも出る司法解剖の結果を見て、八巻さんとの関連を調べる。同病院は夜間、警備員が常駐。午後9時以降は原則的に、関係者以外は出入りできない。
さらに、4階では春から不審な“事件”が続発していた。4月にナースステーションに掛けてあった看護師のエプロンが切り裂かれ、6月20日には患者1人のカルテ数枚が抜き取られているのが発覚。8月には病院スタッフのペットボトルに針のようなもので穴が開けられ、漂白剤のような異物が混入されていたこともあった。いずれも内部調査などは行ったが、警察への届け出はしなかったという。
高橋洋一院長は会見で、同病院に関し「終末期の方が転院してくることが多く、亡くなる方は他の病院よりは多いかもしれない」と説明。高齢者施設での虐待事件などが相次いでいることにも触れ、職員を信じたいとする一方で、「(八巻さんを殺害した人物は)院内も否定できない」とした。また、「最近は、特に若い方の中で信じられない感情を持っている方もいて、理解できません」とも話した。
◆界面活性剤 物質と物質の「境界面」で働く成分の総称。合成洗剤など身近な製品や医療用の消毒液に用いられている。水になじみやすい「親水基」と、油になじみやすい「親油基」の双方を持ち、洗剤やシャンプーの場合は油分の多い汚れの周りを親油基が取り囲むようにくっつき、引きはがす。細菌のタンパク質を腐食して殺す消毒作用も持ち、高濃度で血管に入ると、タンパク質から成る血管や臓器に作用して中毒を起こし、死に至ることもある。