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櫻井よしこの「論戦」――凛たる国家へ 日本よ、決意せよ
【第12回】 2016年9月2日
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櫻井よしこ [ジャーナリスト]

エリザベス女王が「非常に無礼」と評した中国
中国が「日本叩き」に必死になる理由

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日本に核拡散の危険ありなどと、中国にだけは言われたくない。核を拡散してきたのは他ならぬ中国である。中国が北朝鮮に核開発のための全面支援を行ったこと、パキスタンには核物質の製造を含めて核兵器完成に必要なインフラ技術まですべてを伝授したと、トーマス・リード、ダニー・スティルマン両氏の共著『The Nuclear Express』(核の急行便)で書いている。リード氏は米レーガン政権の国家安全保障会議で対ソ連戦略を担った専門家である。

中国がパキスタンの核武装を助けたのはインド牽制のためだ。インドはパキスタンによる北からの脅威、中国が仕掛ける国境紛争に加えて海からインドを追い詰める「真珠の首飾り作戦」で、膨大な国費を使わされ、そのために「超大国になれず、地域大国として終わるだろう」とさえ言われている。

今回、イギリスは王室を筆頭に国を挙げて中国を歓迎した。格別の歓待を引き出したのは中国の膨大な資金力である。ヒンクリーポイントの原子力発電所建設、新高速鉄道建設などの大プロジェクトに総額300億ポンド(約5兆5000億円)を中国が出資するという。イギリスがどれほど徹底して実利を追っているかが見えてくる。習氏のイギリス訪問は徹頭徹尾、ビジネスなのだ。

欧州連合(EU)の大国、ドイツの親中政策に続いて、私たちはイギリスが中国に吸い寄せられる様子を眼前に見せつけられているわけだ。それはEUが経済で中国に引き寄せられ、歴史問題で日本が徹底的に悪者にされていく危険なプロセスでもある。日本人の私たちはこうしたことをしっかりと頭に入れておかなければならないことを強調したい。

中国は資金力で欧州諸国を取り込む勢いだが、その国内情勢は異常である。習氏は「総体的国家安全観」を打ち出し、政治、軍事だけでなく、経済、文化、社会、科学などのあらゆる分野で「国家の安全」が脅かされており、あらゆる分野で取り締まりを強化すると訓話した。当局の意に反することすべてが取り締まりの対象になる。そのことを示すのがますます強化される弾圧と深刻化する人権侵害だ。こんな前近代的体制がどれだけ持つのか、疑問である。

中国が無理を重ねて日本非難の包囲網を築きつつあるのを尻目に、安倍晋三首相は10月22日、モンゴルと中央アジアの6ヵ国歴訪の旅に出る。いずれも地政学的に非常に重要な国々だ。日本は中国とは対照的な、現地の国の人々を育てる開発と、公正な民主主義の価値観に基づく関係強化で、日本と連携する諸国との未来展望の枠組みをつくることに集中するのがよい。

(『週刊ダイヤモンド』2015年10月31日号の記事に加筆)

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櫻井よしこ [ジャーナリスト]

(さくらい・よしこ)ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」記者、同東京支局長、日本テレビ・ニュースキャスターを経て、現在はフリー・ジャーナリスト。1995年に『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞、1998年には『日本の危機』(新潮文庫)などで第46回菊池寛賞を受賞。2007年「国家基本問題研究所」を設立し理事長に就任。2011年、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞。2011年、民間憲法臨調代表に就任。 著書に『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)、『「正義」の嘘』(花田紀凱氏との共著)『日本人のための憲法改正Q&A』(以上、産経新聞出版)、『日本の敵』(新潮社)、『日本人に生まれて良かった』(悟空出版)など多数。


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