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業界トップでなぜ「不適切請求」は起きたのか

デジタル広告で発覚した広告主への「不適切請求」について会見する中本祥一電通副社長(中央)=2016年9月23日午後4時15分、東京証券取引所で尾村洋介撮影

 国内広告代理店最大手の電通は23日、同社グループのデジタル広告サービスで、未掲載なのに広告主に料金を請求したり、広告主に送る実績リポートに事実と異なる虚偽の記載をしたりするなど、不正・不適切な取引があったと発表した。

 これまでの社内調査でわかった問題取引は633件(広告主111社)、関係する料金請求額は総額約2億3000万円。このうち広告が掲載されていないのに料金を請求していたものが14件、320万円分あった。調査はまだ途中段階で、データと資料、社員への聴取などを行い、年末までに全容解明を目指す。電通は、未掲載だけでなく、実際と異なる不適切な掲載をした取引について、料金の全額を広告主に返還する方針。

 同社が今回、不適切な請求を行った広告主にはトヨタ自動車なども含まれる。広告業界はデジタルシフトを急いでいるが、新しいデジタル広告は、広告主からみると、仕組みがわかりにくいところも多い。業界トップの電通でこうした問題事例が発覚したことで、企業のデジタル広告全体への不信感が広がる可能性もある。

 電通は同日、中本祥一副社長らが東京証券取引所で記者会見し、社内調査の詳細を明らかにした。それによると、今回、不適切な請求が行われたのは主に「運用型デジタル広告」と呼ばれる新しい分野。最新技術を使い、ポータルサイトや検索エンジン、SNS、アド(広告)ネットワーク向けに、性別、年齢、興味・関心を絞ったオーディエンス(読者)に配信できる。電通では2010年ごろから急増してきたという。

 運用型デジタル広告は、期間とスペースを指定してサイトに載せる従来型の「バナー広告」とは異なり、日々の運用結果をみながら配信ターゲットを再調整し、場合によっては広告主と再協議するなど作業が複雑になる。

 今回発覚した不適切取引は、掲載を約束した期間が予定通りでなかったり、実際には掲載されなかったりしたのに、事実と異なるリポートを広告主に提出していた。

 これらは同社やグループ会社の社員など複数の現場担当者の故意やミスなど、個人ベースで行われ、上司は関与していないが、不正を見破ることができなかったという。今年7月に問題が発覚したきっかけも、社内ではなく広告主からの指摘だった。

 現場担当者はなぜ、こうした行為を行ったのか。「上司に怒られるのがいやだ」「上司のプラスの評価を得たかった」などのケースもあるという。

 電通によると、成長分野のデジタル広告は目標設定が高い一方、社内に仕事の質的な変化への認識が足りず、担当する人員の「質・量が十分ではない」状況だった。また、専門性が高いため、担当外からの管理監督の目が届きにくいという面もあった。

 中本副社長は「(デジタル広告分野は)ミスが起こりやすい領域。管理体制の不十分さが問題を引き起こした一因」「現場へのプレッシャー含めて、十分な配慮をしなければならなかった」と述べた。今回の問題の責任については「人為的なミスを含めて特定個人というよりも業務を統括するマネジメント、経営の問題」と結論づけた。

 電通は今年7月、デジタル専門子会社「電通デジタル」を設立するなど積極的にデジタル化に乗り出している。だが、同子会社の母体となった「ネクステッジ電通」も今回の不適切な業務に関わっていた。【尾村洋介/デジタル報道センター】

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