JR各社によるローカル線縮小の動きが加速している。

 JR北海道は、自力で維持できない路線を近く公表し、存廃を地元と協議する意向を示した。JR西日本は、島根、広島両県を結ぶ三江線(108キロ)の廃止を正式に決めた。

 87年の国鉄民営化に先立ち、不採算のローカル線は大幅に整理された。しかしこの30年の過疎化と道路網の整備で、残された路線も客離れが続いている。

 全国のJR路線のほぼ半分はいま、80年代にバス転換の目安とされた輸送密度(1日1キロあたり4千人)に届かない。ローカル線の沿線住民や自治体は、こうした厳しい現状をしっかり認識しておく必要がある。

 各社を最近悩ませているのは災害のリスクだ。

 8月の北海道の豪雨で、JR北海道の主要路線が不通になった。巨額の復旧費は重荷だ。東日本大震災では、JR東日本の2路線がバス高速輸送システム(BRT)に転換され、鉄路の復旧は断念に追い込まれた。

 どの路線でも、予期せぬ災害で廃止が突如浮上する可能性はあると思ったほうがいい。

 ローカル線の苦しさについて、JR側は普段から沿線に理解を得る努力をしてほしい。JR北海道は今年、路線別の収支状況を初めて公表し、全区間が赤字であることが明らかになった。ほかの社もこうしたデータを積極的に開示し、沿線に危機感を共有してもらうべきだ。

 人口減少時代に入り、鉄道に限らず、公共交通の維持は困難になってきている。本当に必要な足をどう守るか。各地域で検討を深める必要がある。

 財政再建中の北海道夕張市は8月、市内を通るJR支線の廃止をJR北海道に提案した。新たな公共交通づくりへの協力を条件とした「攻めの廃線」(鈴木直道市長)という。

 地域ごとに交通事情は違う。だからこそ、自治体は住民の移動ニーズをよく見極めたうえで、ローカル線の存廃をめぐるJRとの協議も、受け身にならずに進める姿勢が欠かせない。

 国ももっと危機感を持って対応すべきだ。

 「地方創生」の旗のもと、国はリニア中央新幹線や整備新幹線に数兆円規模の財政投融資を決めた。一方で、ローカル線の存廃をめぐる問題はほぼJRと地元任せだ。

 特にJR北海道は、国が設けた基金の運用益で赤字を埋めるという発足以来の支援の枠組みが低金利で成り立たなくなっている。来春でJR発足30年。抜本的な見直しを考えるべきだ。