自民党が総裁選のルール変更に向けた議論をはじめた。

 総裁選の歴史は、権力闘争の歴史である。派閥や実力者の綱引きによって、さまざまな党則改正が重ねられてきた。

 今回は「連続2期6年」の総裁任期を延長したいという。

 執行部からは「3期9年」という私案が示され、任期を制限する規定を撤廃すべきだとの意見もある。

 安倍氏に限った任期延長ではなく、将来の総裁すべてに適用する党則改正をめざすという。だが少なくとも当面は、2年後に2期目を終える安倍氏の任期延長が目的である。

 長期政権は外国指導者との関係を深めやすい。政治を安定させる観点からも望ましい。延長論者からはそんな声が出る。

 一方で、権力の長期化は硬直や腐敗を招く懸念もある。

 自民党長期政権が続いた中選挙区制時代とは異なり、政権交代が起きやすい小選挙区制になった。首相は衆院選を通じて有権者に事実上、直接選ばれている。そのことを考えれば、総裁任期の延長そのものに異を唱えるものではない。

 ただ、忘れてはならない論点がある。総裁の任期が首相の任期より優先されている現状だ。

 これは中選挙区制時代の遺物でもある。有権者が選挙で首相を代えることが難しかった時代には、党内の派閥が総裁選を通じて首相の座を争い、結果として首相の在任期間を調整する意味があった。いわゆる「疑似政権交代」である。

 だがいま、有権者と首相の関係は変わった。小選挙区制時代の首相は、衆院議員の任期(4年)の間に、総選挙で掲げた公約を実現すべきリーダーとして有権者に信任される。

 であれば、首相として本来務めるべき任期4年の前に、党総裁選の結果で首相が交代するのは有権者の信任に反する。

 任期をまっとうすべきだという点では、首相の判断で衆院解散ができるとする解散権の扱いも考え直す必要がある。

 いつ解散があるか、与野党の議員たちが常に浮足だつ状況は望ましくない。

 日本と同じ議院内閣制の英国では、2011年に、議会が内閣不信任した時以外にはほぼ解散ができないとする法律が成立した。政治の思惑での解散を許さず、任期中、腰を据えて政権運営に取り組むためだという。

 2大政党の党首選びのルール変更は、首相の選び方の議論でもある。日本の政治をより成熟させ、安定させる論点も、あわせて論じてはどうだろう。