電通は23日、インターネット広告で実際に掲載されていないのに、広告料金を請求するなど不適切な取引が見つかったと発表した。これまでに633件、2億3000万円分が判明した。新聞や雑誌などの紙媒体に比べて、ネット広告は掲載されているかを広告主が確認するのが難しい。電通はさらに調査を進め、被害にあった広告主には個別に補償する。
7月にトヨタ自動車からの指摘を受けて発覚した。広告掲載の時期が契約とずれていたほか、配信していない広告を配信したとする広告主への虚偽報告などが見つかった。22日時点での不適切な案件は111社で633件。そのうち、未掲載にもかかわらず料金を請求した悪質なものが14件、計320万円分あった。
電通は原因の解明に必要なデータが残っている2012年11月以降の20万件も引き続き調査する。電通では「故意、人為的なミスが起きているのは事実」(中本祥一副社長)として、広告主には個別に返金などして補償する。調査終了後に社内処分も検討する。
テレビや新聞などの広告は掲載時期と場所を指定して契約するが、ネット広告は年齢や性別、興味の有無などの属性を判断して個別に配信する。同じウェブサイトを見ていても、消費者によって広告内容が異なるなど複雑だ。どのページに掲載され、何回クリックされたかというのはコンピューターで管理している。データ量が膨大なため、広告主も契約通り広告が掲載されているかチェックするのが困難だ。
ネット広告の市場は拡大しており、15年では1兆1594億円と全体の19%を占めるまでに成長している。広告業界では首位の電通だが、ネット広告の分野では専業のサイバーエージェントなどが先行している。顧客からの需要が急増するなかで人材が不足し、「報告書のチェック体制など、組織の整備が遅れた」(同)ことが不祥事につながった。電通は全容を解明し、年内に再発防止策を公表するとしている。
23日の株式市場で、電通株は一時、21日の終値に比べ390円(7.2%)安を付けた。現時点では広告出稿の見送りなどはでていないが、広告主と株式市場の信頼回復には一刻も早い全容解明と再発防止策が必要になる。