原発事故を教訓に、強固な安全性の確保を
福島原発事故で明らかになったのは、今思えば当然のことですが、「絶対安全な技術はない。」と言うことであり、「原子力には大きなリスクがある。」と言うことです。原子力規制委員会の新基準が出来た今、原発の再稼働に際してはこの基準への合致を厳格に審査するのみならず、不断の努力で、日々の適正な運営と、更なる安全の確保に、電力会社、国を挙げて、一丸となって取り組むべきものと思います。
エネルギーは、「安全の確保」と「量の確保」を両立すべき
その一方で、東日本大震災以来散見される、「原発即時撤廃」「全て代替エネルギーにする。」といった極端な意見には、私は率直に、賛成しかねます。
震災前、原子力発電は日本の電力需要の1/3を賄っていました。対して代替エネルギーは、日本の電力需要の1%未満にすぎません。現在は外国から原油や天然ガスを輸入して火力で賄っていますが、それは、円高や(今なお日本の円は歴史的に見れば高い水準にあります)、世界経済の停滞によるエネルギー需要の低下に助けられた面が大きく、今後の化石燃料の枯渇や、新興国でエネルギー需要が爆発的に増大することがほぼ確実であることを考えると、これからも同じように石油燃料を確保できるという保証はまったくなく、近い将来エネルギーの需給はひっ迫すると考えるのが、正しいのではないかと思います。
エネルギーは、国民生活を動かす最も根源的なものであり、私たちは、「エネルギーの安全」と同時に、「エネルギーの量の確保」を考え、両者を両立させるべきなのです。
未来の技術、未来の状況は、誰にもわかりません。私たちの科学技術を信じて、より良いエネルギーの未来を作りましょう。
では、具体的にはどうすべきか。私は、代替エネルギーの技術開発を積極的に進めると同時に、更に安心・安全に原子力発電を行う技術も、全力で開発すべきだと思います。
30年前、今話題になっているシェールガスや、メタンハイドレートが現実のものになることを予言した人はほとんどいませんし、新興国のエネルギー需要がこれほどまでに拡大することを、予測していた人もまずいません。技術や世界情勢は、20年、30年あれば、驚くほど変わります。逆に言えば、将来どのような技術を使うことが出来、将来の世界のエネルギー需要がどうなっているかを、現時点で正確に予想することは、誰であっても不可能です。
そうである以上、私は、常に予断を持たず、可能な技術開発を全力で進めながら、その時その時存在する最も良い技術を用いて、最も安全で、かつ十分な量を確保できる方法を常に採用しつづけることによって、エネルギーの安全の確保と、エネルギーの量の確保を、長期的・安定的に両立することが、最も現実的で、国民生活に資するものだと思います。
私たちは、日本をここまで繁栄させた私たちの技術力を信じて、代替エネルギーと原子力の未来を切り開くべきだと、私は思います。