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2016-09-23

折り目正しいラブコメの流儀「この美術部には問題がある!」

殊勲の活躍、と言っていいはずだ。『この美術部には問題がある!』の及川啓監督は全12話中、絵コンテを10本(第10話のみ共同)、演出を2本、自ら担当した。工程が細分化され、絵コンテ「清書」の役職すら見かける昨今の深夜アニメでこの仕事量は異例だろう。ショートアニメではなく、30分枠のTVシリーズで達成したことにも驚かされる。

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その恩恵を最大限授かったのが、主人公とメインヒロインを兼ねる宇佐美みずきだ。本作は一にも二にもみずきの乙女な可愛さを描き出すことに心血が注がれている。みずきはとにかく「赤面」する、少女漫画的なキャラクター(腕っぷしは強いが)。照れたり、ときめいたり、リアクションに忙しい。そして片思いの相手であり、同じ美術部の内巻すばるの鈍感さにいつも空回りしてしまう。そんな愛らしい様子に「ラブコメ」を感受する。ラブコメは距離が縮まったように見えても、関係値がいずれスタートに戻るという“流儀”がある(終盤にラブストーリー化する場合も)。『この美術部に問題がある!』は折り目正しく、その流儀に則ったTVアニメだ。進展しない様がいい。みずきが勝手に盛り上がったり、落ち込んだりする様がいい。作画の水準も高く、誤りのない高品質のラブコメ。及川監督の働きぶりには、頭が下がる思いだ。

本作のストロングポイントはそうしたラブコメの作法を修めた上で、作画・演出それぞれに尖ったバラエティ豊かなエピソードが用意されていること。

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たとえば、第3話のコレットの上履きを足だけで拾い上げるシーンから溢れ出るフェティシズム。「脚フェチ」は今やメジャーな属性とはいえ、これほど細かく芝居を入れ、作画されているものは稀だ。性的な関心に薄く、イノセントなコレットの脚にフェチを見出す業の深さもきわどさに拍車を掛けている。

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第7話「マスター伊万莉」も忘れがたい。コレットと伊万莉まりあが接近するこのエピソードのテーマは「中二病」。既に罹患している伊万莉を演出するハッタリの効き方が肝。具体的には屋上で一人佇む(ポーズをとる)伊万莉のロングショットに対する「情報の無駄使い感」がすばらしい。映像表現は、基本的にカメラを引いていけばいくほど、フレームの中の情報量が増える。にもかかわらず、ロングショットで捉えた伊万莉のカットには実体的な情報がほとんどない。要するに演出ギャグ(ハッタリ)なのだ。

部長と小山先生の孫娘・萌香の意外な組み合わせがハマッた第9話「もえさんぽ」も父性的な優しさが募る、味わいある一本。部長の世話焼きな一面とついつい構ってあげたくなる萌香の愛くるしさを授業中の校内探索というひとときのイベントにギュッと凝縮。まるで仲睦まじい親子を映すかのようなフレーミングが心憎い。

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そして最終回は雨の日の相合傘と勘違いから始まる、名字ではなく名前で呼んでいいかという問答の末、「元に戻った」話だった。まさしくラブコメの流儀通り。「そんな簡単には、呼ばせてあげないんだから」というみずきの答えは、恋愛と喜劇の反復を予感させる。まだまだこの美術部の問題は解決されそうにない。これから先も続くであろうその未解決の反復こそ、ラブコメの真骨頂だ。


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大塚舞
キングレコード 2016-09-28

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