廃墟を旅する 

産業遺産や戦争遺跡、時を超えた郷愁への旅路へ・・・

【産業遺産】旧豊後森機関庫

白銀のターンテーブル

旧豊後森機関庫
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 昨夜から降り続いていた雪は早朝にはやんでいた。車中泊をしていたので、駐車場で目を覚ますとあたりはすっかり白銀の世界に変わっていたのだ。
そして、昔から一度は訪れたいと思っていた廃墟、「旧豊後森機関庫」も朝の冷気に包まれていた。


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ここは九州の大分県である。
ちょうど朝もやの中を引き裂くように朝日が差し込み始めたこの場所は、日本でも屈指の有名廃墟であり、産業遺産のある場所だ。


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遠くの山々は雪を被り、幻想的な情景を作り出す。


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今回の廃墟を紹介したい。
この廃墟を見ても一見では何なのかわからない人もいるかもしれない。これは、鉄道遺産だ。


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昔の鉄道といえば蒸気機関車が主流であった。この蒸気機関車というのは現在の電気機関車と違い明確に前後の区分がある。車両を格納庫へ格納しようとしたとき、前を向いて入れると、当然出すときはバックで出なくてはならなくなる。しかし、それを毎回全車やっていたのでは面倒だし、どこかで前に向けなくてはならないので効率が悪い。さらに、車両を並列に横に並べるような格納庫を作ると場所や分岐等の装置をたくさん作らないとならない。

そこで・・・


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この装置である。これは「転車台」あるいはターンテーブルというものだ。
円形の装置はこれ自体360度回転する。つまり、この上に車両を載せて回してしまえば、戦車で言うところの超信地旋回をしているのと同じことになる。そして、線路と連接させておけばどこにでも車両を向けることが出来るようになるのだ。
さらに後方に見える格納庫にもひと工夫がある。このような格納庫は「扇形庫」という。転車台と組み合わせると場所をとらないで車両を効率よく格納できる。
このような転車台と扇形庫は国鉄時代に蒸気機関車が活躍していた時には多くの機関区で見ることが出来た。しかし、蒸気機関車が次第に電気機関車に代わって行くにつれて、転車台も扇形庫も姿を消していった。


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現在九州にある転車台と扇形庫の組み合わせはこの豊後森機関庫だけになった。


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第二次大戦中もこの機関庫は重要な交通の要点だった。


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なので米軍機の空襲にあい、機銃掃射で三名の職員殉職者を出している。今もどこかに機銃掃射の跡があるようだが、自分は確認出来なかった。


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現在この廃墟は近代産業遺産のみならず、国指定の登録有形文化財にも指定されており、その保存活動が進められている。


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線路は撤去されてしまったが、この転車台だけでも残ってよかった。


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降り積もった雪が特徴的な転車台の形状を際立たせている。


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こちらは扇形庫。ライトアップされるようだ。


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このような転車台は現存数は少ないが、中には実際に車両を載せて稼働する場所もあるので、興味があれば稼働しているものを見るのもよいだろう。


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こちらは横壁。戦前の建物らしく窓枠が特徴的だ。


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円形の柱が立ち並ぶ。


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新雪を朝日が照らす。


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錆びついたボックス。


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廃墟というより神殿のような雰囲気だ。


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天井は真っ黒だ。排煙のためだろうか。そして排煙のための装置がぶら下がる。


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さぁ、本格的に日の光が差し込んできたぞ。


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冬は太陽の光は弱くなるが、それでも力強い光の柱が出来る。何か光っているな。


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この窓は言い表せないような風景を作ってくれる。


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町は急速に目覚めの時を迎える。


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良い廃墟には良い窓がある。


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全国廃墟窓遺産でも作ろうか。


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倉庫。


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仕切りの向うに行ってみよう。


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そこはさらに広い空間だ。


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窓もずらりと円形に並んでいる。


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ガラスがない場所には植物が巻き付いている。


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白と黒の世界。


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放射状に延びる光の柱。


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朝のほんの少しの時間しか出会うことのできない瞬間。


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まさに奇跡の瞬間に出会いた。


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かつてはこの場所にたくさんの蒸気機関車が格納されていた。


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現在はわずかな名残りしか残っていない。


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だが、全てが無くなったわけではない。


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こうして機関庫が残っていることが奇跡なのだ。


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この風景を後世に残していく。


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それは素晴らしいことだ。


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熱を帯びた光で雪は少しづつ溶けてきたようだ。


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シンメトリーで美しい光景。


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明るさが増す。


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強さを増す光の柱。


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『旧和賀川水力発電所』でも感じた窓枠のマジックがここでも見られそうだ。


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明け放たれたドア。


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一部窓枠が外れている。


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柱には様々な機器が残されている。


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かつての働きが感じられる。


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鉄道遺産らしいものも転がっている。


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少しあったかくなってきたかな。


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この場所にいればいるほど姿を変えていく風景。


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一部では明暗が色濃くなる。


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車輪。


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眩しい。


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この時間を大切にしたい。


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シャッターを切り続けよう。


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円形が広角レンズのような光景を作り出す。


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奥に転車台が見える。


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窓枠を余すところなく見てみよう。


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産業は安全第一。


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『新梨子油力発電所』で同じような光景を見たな。


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無機質な廃墟に光が降り注ぐ。


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床。どうやら木材ブロックのようだ。


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自分を大切に。


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あ、なんて神々しいのだろう・・・


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九州にいるのに、もうすでに次の旅に意識が向いていく。旅愁は尽きることがない。


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今はあまり見ることが出来ないモダンなライトカバー。


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田野も山岳も町も雪化粧している。


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ずいぶんと明るくなってきた。


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別の倉庫があった。ここは鉄道関係の物が散乱している。


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ここも近代遺産としての整備が進めば消えていくのだろうか。


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少し悲しい気持ちになる。


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光の世界へ。


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強い光の柱が伸びている。


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窓の外もさらに白くなっている。


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梯子があるので上に登ってみよう。


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わずかな足場にも雪が積もっている。


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上からは全体が見渡せる。太い鉄骨が伸びている。


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ここからは雪も放射状に吹き込んでいる様子がよくわかる。


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均整のとれたものは美しい。


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それがこの廃墟ではよくわかる。


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そして、その人口の美しさに自然が一味を加える。


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まさに奇跡的な巡り合わせがこの光景を作っている。


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ひとまず下に降りよう。ゆっくりと・・・


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この場所に登る人もそう多くはないだろう。


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しかし、この場所に登らないとみられない光景もある。


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空が青くなってきた。


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すっかり朝に変わっている。


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錆びついた転車台も眩しく照らされようとしている。


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白と黒の世界も少しづつ顔色を変えていく。


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一日が始まろうとしている。


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また何気ない一日が始まる。


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転車台を見ていこう。


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ここで転車台を制御するみたいだ。


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細長く赤さびた制御室。


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白く塗装された鉄骨が奥へと伸びている。


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この転車台がふたたび動き出すこともあるのだろうか。


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辺り一面は白銀の世界である。


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その色が少しづつ濃くなる。ある冬の一日。


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転車台の説明版があった。


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機関庫の裏側に回り込んでみた。


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ここからでも丸みを帯びているのがよくわかる。


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窓ガラスはところどころ割れてしまっているが、廃墟的にはそのほうが良い。


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このごろ産業遺産たる廃墟が次々にこの世から消えてなくなっている。


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 この世の流れ、世間の潮流がそのように廃墟をこの世から消していくのなら、それも自然の流れだ。絶対にあらがうことは出来ないだろう。しかし・・・


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 そのように全てが消えてなくなってしまうことは寂しい限りだ。ことに、このような産業遺産まで、日本の現在の礎を築いてきた遺産まで無くなっていくことは耐え難いものがある。


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 でもこのように後世に残る廃墟もある。そして一握りのこのような廃墟は人々の記憶にとどまり続ける。


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 朝日に照らされた機関庫は、かつての栄光を人々に伝え続けることだろう。

 白銀の世界で産業遺産はより一層輝いているように思えたのだ。


おまけ

旧豊後森機関庫のある大分県玖珠町の観光協会のサイトに詳しい紹介がされています。そちらもご覧ください。
【http://kusumachi.jp/index.html】

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