「ねぇ、ストーカーされたことってある?」
- うーん。ないかなぁ。
「私はあるの。大学生の頃」
- どんな風に?
「私が行くところ、どこにでもその人がついてきていたの。たとえば、スーパーに行って振り返ればその人がいたし、部屋を出て道を見渡せば、その人の車があったの。もちろん、たまにはいない時もあったけど」
- それ、怖くない?
「最初は怖かった。でも、その人は何もしてこないの。何もしてこないと思うと、逆に心強くなっちゃって。その時、私が住んでいたのがちょっと治安が悪い場所だったの。家の前でも喧嘩があったり、酔っぱらいが私の部屋を殴ったりすることもあって。だから、逆にその人に見守られているのが安心になってきちゃって」
- へー。。。そういうもんなんだ。
「実際、私が一度、帰り道に酔っぱらいに絡まれた時に、その人が駆けつけてくれて、酔っぱらいを追い払ってくれたの。それから私はお礼をいって挨拶をする関係になったの」
- いいストーカーだね
「それが数ヶ月は続いたのかな。でも、問題がでてきて。私に彼氏ができたの」
- わ。どうなったの?ストーカーはパニックにならなかった?
「私のことを見守ってる時間は減ったの」
- ショックを受けたのかな?
「違うの。私の代わりに彼を追いかけ始めたの」
- どういうこと?危害を加えたの?
「彼のストーカーになって、彼が浮気しているのを見つけ、証拠写真を私のポストに入れてくれた。お陰で私は彼の裏切りを知ることができた」
- え、、、。
「でもさすがに私も怖くなって、ある日、その人を捕まえてきいたの。なぜ私を追いかけるんですかって」
- 勇気あるね
「実は、その人は、私の父が雇った探偵だったの。私になにか起こらないように見張っておくというのが仕事だった。その一環として、私の恋人の素性も調べてくれたってわけ」
- ひえー。そんなことがあるんだね
「ストーカーはいつ仕事してるんだろう?と思ってたのがそれで解決したの。それがその人の仕事だったから」
- そうなんだー。ほんとにボディガードみたいなものなんだね
「そう。実は今も店の外に見守ってくれてるよ」
- え、今でもいるの?
「そう。だから、あなたが私の彼氏と寝てるっていう話も彼が教えてくれたの」