うつ病は、どこがノイローゼと違うかというと、臨床的に次のような点があげられている。
●うつ病 心身の障害、社会適応性良好、自責の念が強い、言動は控え目、物事に無関心、薬物療法が奏効
●ノイローゼ 心理障害が主、社会適応性不良、他罰傾向が強い、言動は活発で派手、無関心にはならない、心理療法が主。
しかし、あくまでもこの違いは相対的なものである。ノイローゼは、心理的障害が主といっても、体の障害から起こるものも少なくない。精神機能といえども、体の一部である神経細胞が主体となっておこなわれている生理機能なのだ。うつ病にしても、ノイローゼにしても、根本にあるのは体の障害である。結局、結局、あらわれ方の違いであり、程度の違いである。
戦後の混乱期には不安神経症であるノイローゼが多発しやすかった。現代は安定と繁栄の時代といわれるが、一皮むけば、むしろ生命の危機感が深刻化しているのであるから、人々がうつ病になりやすいというのも当然の話であろう。
また、気力のなさや不活発さがより顕著に現れる障害が多くなっているということは、人間の実質がよりひよわになっていることを物語っている。そして、自分本位で他に迷惑を及ぼすタイプよりも、一見周囲に適応しながらも深く鬱屈し、自殺しやすいタイプが多くなってきているといことは、それだけ精神障害度が増していることを意味している。
では、脳・神経系の働きを狂わせるものは何であろうか。その主要因は食生活の誤り、とくに白米・肉食の多食である。
それをはっきりと証明してくれたのが、マッカリンの実験だ。穀物や野菜のフンザ食つまり自然食を与えたネズミは一匹の例外もなく健康に育ったのに対して、肉食をふんだんに与えたグループでは、すべてに胃腸障害や貧血、脱毛、肝炎などの障害がおこるとともに、脳の働きも狂って共食いをはじめたのである。
動物は弱肉強食の世界といわれるが、共食いなどという現象は、まず見られないことだ。例外的にあったとしても、食物がまったくなくなったときや、一方が瀕死の状態にあるというような、よくよくの事情があるときに限られる。食物がたっぷりと与えられながら共食いをはじめるというのは、肉食が脳・神経系の機能を混乱させる作用をもっているからにほかならない。
人間においても、肉食はまったく同様の結果をもたらす。自殺するか、狂暴性を発揮して殺人に及ぶかは、脳・神経機能がどのように侵されるかによって違ってくるもので、脳の機能が狂わされることに変わりはない。
肉食は血液を著しく酸毒化するものである。脳神経も血液によって養われているから、血液が酸毒化すれば、その機能は必然的に異常化する。
血液を酸毒化するのは肉だけではなく、卵や牛乳も同様だ。これら動蛋食品は赤血球をこわれやすいものにする。また、白米や白砂糖などの精白食品も血液を酸毒化するが、同時に深刻なミネラル不足をおこすために、脳細胞の活動をだらけさせ、どちらかというと狂暴性よりも痴呆性をあらわして、いわゆるボケた状態になりやすい。
うつ病の治療には抗うつ薬が用いられているが、これは大いに警戒してかからなければならない。化学薬剤は結局その目的とした機能の弱体化をもたらすもので、精神作用に影響を及ぼす薬剤も、ついには精神の荒廃をもたらす結果となろう。
向精神薬ではなくても、化学薬剤には脳・神経系に影響を与えるものも少なくない。例えば降圧剤や副腎皮質ホルモン・経口避妊薬などによっても、うつ病がおこりやすいことがわかっている。薬剤に限った話ではない。化学調味料や精製塩などの合成食品も要注意。われわれの体細胞の生理にとって不自然な物質である点にかわりはない。
このように自分の意志によっていくらでも対処できるものを放置しておいて、海が汚染されているから魚は危険だとか、白米より農薬がたくさん含まれているから玄米は良くないなどとさわいでいるのは、現代人の矛盾とでもいうべきものであろうか。
うつ病になるきっかけは、昔は、事業の倒産とか、家族の死、定年退職といった悲観的な出来事が多かったのに、最近では職業からくるストレスによるものが圧倒的に多くなっている。というわけで、うつ病は中年期の男性、それも責任感の増大する管理職・知的レベルの高い人に多くなっている。
精神的ストレスは血液を酸毒化する一つの要因である。ストレス過多の生活をしているということは、血液酸毒化の悪影響が体をジワジワと蝕み続けているということだ。突然大きな不幸がふりかかったからといって、その時点で急に生理機能状態がガタガタになる、というものではない。
とはいえ、精神的ストレスが大きいからといって、必ずしもうつ病になるとは限らない。血液の性状さえしっかりしていれば、体は上手にストレスの解消をはかってしまうからだ。白米・肉食によって血液が酸毒化していることが、うつ病の真因である。従ってうつ病を治すためには、食生活の改善が不可欠だ。
まず、直接、血液中の酸毒成分を中和する作用をもつ葉緑素を大量に摂る。合わせて、酵素をたっぷり補って腸内細菌群を正状化することによって消化・造血機能全体の健全化をはかるために玄米・菜食をおこない、胚芽を充分い摂る。なお、ストレス解消作用の著しい朝鮮人参、薬草茶(甘草、イカリソウ、オオバコなど)を用いればいっそう効果的である。
@ 肉食は厳禁・肉食は血液を著しく酸毒化する。血液の酸素運搬力が大幅に減退するため、大量の酸素を必要とする脳、神経系の機能に狂いを生じやすい。牛乳、卵も同様。
A 白米主食をやめる。胚芽欠乏食は、ビタミンB群欠乏による代謝の混乱をおこして、脳・神経系を弱体化する。白パン、ラーメンなどの小麦粉食品は、白米以上に有害。
B 白砂糖をやめる。白砂糖はカルシウムを奪うので、神経系を過敏にし、わずかの刺激でも機能の混乱を招きやすくなる。
C 抗うつ剤に頼らない。科学薬剤は体の自然性を害するから、結果的には逆効果となる。向神経薬はもちろん、その他のどんな化学薬剤も、極力避けるべきである。
D 玄米・菜食に切り換える。根治の決め手である。玄米を主食にし、野菜・海藻・小魚介類を副食とする。それに体質に合った健康食品と薬草茶をプラスするのが、基本原則である。
【朝鮮人参】 煎服、エキスを用いてもよい。精神の安定化に卓効をあらわす。
【ローヤルゼリー】 調節機能を健全にし、心身の衰弱を回復する。
【アマドコロ】 地下茎を煎服する。
【イカリソウ】 葉茎を煎服する。薬酒にしても可。
【オオバコ】 全草を煎服。種子の煎服もよい。葉茎を料理して食べるのも有効。
【レンコン】 おろし汁を一日コップ1杯飲む。
【ドクダミ茶】 濃いめに煎じ、お茶代わりに飲む。
【玄米食の副食】 ゴマ、海藻類、ニンジン、レンコン、セロリ、ヤマイモを積極的に摂る。
―「薬をいっさい使わない病気の治し方」より抜粋―